マクロンがウクライナへの派兵も示唆した”真意”、支援の手詰まり露呈と欧州分裂の恐れ

2024.03.29 Wedge ONLINE

 上記の論説を含め欧米メディアは、曖昧戦略の再構築を試みるマクロンの意図は効果を挙げず、むしろ、欧州の分裂を際立たせたと見ている。

 この論説では、フランスの対ウクライナ武器支援のレベルがドイツ、英国等に比べて極めて低く、EU資金を用いたEU域外からの弾薬の調達に反対してきたこと等、マクロンの一貫性のなさを指摘し、必要なのは言葉ではなく現実の緊急の軍事援助だと批判している。また、マクロンが戦略的曖昧さの再構築を目指すのであれば、もう少し事前に同盟国を説得する根回しが必要であったであろう。

 欧州諸国のウクライナ支援国会議でスロバキアの首相からウクライナへの派兵の可能性について発言があり議論があったようで、記者の質問に答えたマクロンの発言は事実に即したものであった。ただ、その後にロシアを戦争に勝たせないために必要なことは何でもすると踏み込んだ発言をしたのは、内々考えていたことを口に出し、プーチンにメッセージを送ろうとしたのであろう。

ロシアの次のターゲットは?

 そもそも、バイデンが早々にウクライナに派兵しないと明言したことで、ロシアは安心して国境を越えてウクライナに侵入したわけであり、今回ドイツや英国が先を争うようにウクライナへの派兵の意図を打ち消したことも同様の効果を持ってしまうかもしれない。本来、西側諸国にとってウクライナへの派兵は、集団的自衛権としての国際法上の権利であり、これを放棄し、ウクライナへの武器援助はするがそれ以上はしませんと自らの手を縛るのは、ロシアとの直接衝突を避けたいからであろうが、それがロシアに有利に働いてしまうということを十分に考慮していないように思う。

 戦争や核戦争を恐れることは、ロシアも同様のはずなのに、ロシアの脅しの前に西側が譲歩してしまっていることに他ならない。これではロシアはNATOや米国の核の傘にないモルドバやジョージアが次のターゲットとなることは明らかである。

 マクロン発言に関し、エストニア、リトアニア及びオランダは否定しなかったと報じられており、プーチンとしても多少の警戒感を持つことになれば、ロシアのウクライナ侵略のコストを上げ、多少の抑止的効果も期待できるのではないか。

 いずれにせよ、マクロンに対しては、言葉だけではなく、ウクライナに対する支援をもっと充実できるはずだとの批判も、その通りだと思う。