フィナンシャル・タイムズ紙は、3月15日付けで、米国のイランとの戦争は通常のストレス・テストを経ていないように見える、と指摘する社説を掲載している。概要は次の通り。
トランプ大統領は、明確な目的も計画もなしにイランとの戦争を始めた。同大統領がこのように簡単に戦争を始めることができたことで、米国大統領には戦争を起こすに際し、何らかの憲法上のチェックが残っているのかとの疑問が提起された。
戦争は他の手段を尽くした上での最後の手段であるべきである。しかし、今回の場合、他の手段が尽くされていないばかりか、トランプ政権は他の手段を理解しようとすることも、それを実現しようと努めることもしなかった。
今や戦争が始まっているが、米国の安全保障機構が弱体化しているため、戦争遂行の能力にも影を落としている。
第二期トランプ政権は経験よりもイデオロギー的忠誠を重視し、国家安全保障機構から反対意見を根絶しようとした。数千人の外交官と官僚が解雇され、または、交代させられた。それとともに、間違った意思決定を避けるために必要な知識も組織の経験則も失われた。
この傾向は外交において最も顕著である。トランプ大統領は、イランとの核合意を交渉する役目を特使のスティーブ・ウィトコフと娘婿のジャレド・クシュナーに委ねた。この二人とも核問題の専門知識がないにもかかわらず、核問題の専門家抜きでイランと交渉することを選んだ。
マルコ・ルビオ国務長官の率いる国務省では、昨年7月に1300人を解雇したが、それによって、中東に関するものを含め、膨大な専門知識が失われた。昨年12月には、トランプ大統領は、30人のキャリア外交官の大使を罷免した。
これにより、80もの大使ポストが空席となった。それには、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の大使ポストも含まれている。中東における米国の主要な大使と言えば、ネタニヤフ首相の熱心な擁護者であるマイク・ハッカビー・イスラエル大使のみとなっている。
昨年5月以来、ルビオ国務長官は、国家安全保障担当補佐官の代理を兼任している。この戦争を始める決定が通常のストレス・テストを経ていないように見える理由は、この二つの仕事が一緒になっていることにあるのかもしれない。米国は、軍事攻撃の強大さを見せつけたが、イランが原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖する可能性への対処振りを検討した形跡はあまり見受けられない。
国防省では、ヘグセス長官が同様に大量の解雇を進めた。戦闘命令の合法性について判断する法務総監も罷免された。ヘグセス長官は、軍の作戦立案者が非戦闘員の死傷を回避できるよう支援するために議会の命令で設置された「非戦闘員保護専門センター」を事実上骨抜きにした。
米国は国際法を選択的に適用していると批判されてきたが、以前の紛争においては、2003年のイラク戦争のように、国連のお墨付きと議会の承認を得るように努めてきた。ところが、現政権はそうした努力を全く払わない。
トランプは、おおっぴらに「力が正義だ」との見方を取っている。自由に軍事力を行使しようとするがために、かえって米国の国力を賢明かつ効果的に用いる能力を損ねているように見える。
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上記の社説は、トランプ大統領がイランとの戦争を「明確な目的も計画もなしに」開始した原因・背景を国務省や国防省における人員の解雇などによる米国の国家安全保障に関わる政府機構の弱体化に求めている。