戦争権限法では大統領が議会の承認なしに60日を超えて戦争を続けてはならないと定めている。大統領がイラン攻撃を議会に通告したのが3月2日なので、5月1日がその期限となる。共和党の一部もこの日が転換点となるとしており、大統領は原則、「戦争を縮小する」か「議会の承認を得て戦争を継続する」かの選択を迫られることになる。
イランが米国との協議でかたくななのは革命防衛隊を中心とする強硬派が権力を掌握したことにあるようだ。トランプ大統領もイラン指導部の「分裂」を指摘しているが、開戦した後、革命防衛隊勢力がペゼシュキアン大統領、アラグチ外相ら文民派との権力闘争に勝ち、権力を掌握した。事実上のクーデターだ。
ニューヨーク・タイムズなどによると、2月28日の開戦時の攻撃で最高指導者のハメネイ師が殺害され、後継者に任じられたモジタバ師も重傷を負った。片足を3回手術し、義足ができるのを待っている。腕も1回手術、顔と唇を大やけどし、意識はしっかりしているが、話すのは難しい状態という。
モジタバ師の声明が代読されたことについては、同師が弱った姿を見せたくなかったからだという。最高指導者に指名されたのは革命防衛隊の力が大きかった。モジタバ師は政治的、宗教的な力がまだ不足している一方、イラン・イラク戦争に革命防衛隊で従軍するなど、そのつながりが強かったことが理由だ。
モジタバ師は最高指導者の地位にあるが、現実は革命防衛隊から決定事項を提示されて同意するという「操り人形」(イスラエルのネタニヤフ首相)的な存在のようだ。革命防衛隊は攻撃された報復として「ペルシャ湾岸諸国を攻撃する」という戦略を策定、イスラエルや米国だけではなく、米軍基地のある湾岸諸国を標的にすることでイランの「報復力」を一気に高めた。
さらにはホルムズ海峡の封鎖を「核兵器」同様の「抑止力」として利用することを決定し、実行に移した。同紙によると、革命防衛隊は米国との協議の代表に元空軍司令官で現実主義者のガリバフ国会議長を選んだ。1回目の協議では譲歩を拒否させ、2回目の協議をめぐっても開催に反対した。
ペゼシュキアン大統領やアラグチ外相は米国の海上封鎖で1日約540億円もの損失を被り、再建に支障が出るとして2回目の協議を主張したが、強硬派勢力が反対し、つぶした。ホルムズ海峡の開放についても意見が対立した。
革命防衛隊の強硬派はバヒディ革命防衛隊司令官、ゾルカドル最高国家安全保障会議事務局長、サファビ最高指導者軍事顧問の3人衆だ。モジタバ師は革命防衛隊で「ハビブ旅団」に所属していたが、その時の戦友の中にガリバフ議長やタエブ元情報長官らがおり、この3人は何年もの間、ハメネイ師事務所内で昼食を共にし“権力のトライアングル”と呼ばれたという。
だが、強硬派にしても経済的苦境にいつまでも耐えうるわけではない。どこかで譲歩が必要だ。
トランプ大統領は親米であれば独裁的な政権でもよいと割り切っており、革命防衛隊の「利権存続」を容認すれば、打開策が生まれるだろう。その辺が協議の落としどころになるのではないか。