群雄割拠のサッカーW杯、過去最多出場国で変わる勢力図…歴史の転換点にもなり得る大会への期待

2026.05.08 Wedge ONLINE

 ハーランドの決定力の高さはここで語るまでもないが、ノルウェー代表ではリーダーシップも発揮している。個の力と組織力のバランスが取れたチームへと進化している点が、彼らの特色だ。

 3月に日本と対戦したスコットランドが同じく7大会ぶりで、気鋭の戦術家であるラルフ・ラングニックが率い革新的なスタイルで話題を集めるオーストリアも、ノルウェーやスコットランドと同じく98年のフランスW杯以来の出場となる「復帰組」だ。またセリエAのインテル・ミラノで主力として活躍するハカン・チャルハノールら、欧州有数のタレント輩出国であるトルコも、3位に輝いた02年の日韓W杯以来の出場であり、どこまで躍進できるか注目される。

 そうした流れがある中で、4つの初出場国があることも見逃せない。アジア勢のヨルダンとウズベキスタン、アフリカのカーボベルデ、そしてキュラソーがそれにあたる。もちろん出場国拡大の恩恵もあるが、それぞれ難しい状況に向き合い、自国サッカーの成長や代表チームの強化を進めてきた成果でもある。ウズベキスタンは旧ソ連の解体後、アジアの代表として初めて世界大会に挑む。

 ”初出場組”の中でも、カリブ海のキュラソーは最少人口出場国として注目を集めるが、その背景には「ディアスポラ戦略」がある。オランダ王国の“構成国”である利点を生かし、オランダや欧州で育った選手を積極的に代表に取り込み、国内の人口規模という制約を補完しているからだ。この手法は、小国が国際競争で生き残るための現実的なモデルとして、今後さらに広がっていく可能性を秘めている。

敗退国から見える代表強化の難しさ

 しかし、出場枠が拡大してもなお本大会に届かなかった有力国の存在は、この大会のもう一つの現実を浮き彫りにする。イタリアは優勝4回を誇る伝統国でありながら、まさかの3大会連続予選敗退となった。これは単なる不振ではなく、世代交代の停滞や戦術的方向性の不明確さといった構造的問題を示唆している。

 同様に、ナイジェリアやデンマークといった実力国の不在も、各大陸における競争の激化を物語る。本来であれば本大会に出場していれば上位進出の有力候補となり得たナイジェリアとデンマークの不在は、単なる番狂わせではない。各大陸予選における構造的な競争激化を如実に示している。

 ナイジェリアはスペインのアトレティコ・マドリーに所属するアデモラ・ルックマンら、フィジカル能力とテクニックを兼ね備えたタレントを豊富に抱え、世代的にも充実期にあったが、予選では安定性を欠いた。組織力が高く、欧州有数のタレント保有国となっているデンマークも、7大会ぶりの予選突破を果たしたスコットランドに競り負けてプレーオフに回ると、堅守速攻を極めるチェコとの一発勝負に屈した。

 14年のブラジル大会でベスト8に進出したコスタリカも、前回カタール大会で日本を破るなど、大舞台での勝負強さを示してきたが、まさかの予選敗退で姿を消した。さらにチリは数年前まで“黄金世代”擁し、南米の大陸選手権であるコパ・アメリカで優勝するなど、世界的にも列強に準じる存在だったが、世代交代の失敗など、チームが崩壊。出場枠が拡大した南米予選でまさかの最下位に沈んだことは、三大会連続で本大会を逃した欧州のイタリアと並び、代表チームの強化の難しさを示すこととなった。

3カ国共催の効果

 48カ国への拡大に加えて、今大会の大きな特徴と言えるのが、アメリカ合衆国、メキシコ、カナダによる史上初の3カ国による共催だ。2018年のFIFA総会で承認され、モロッコとの招致争いを制した結果として実現した。

 北米の巨大市場、既存インフラ、そして商業的価値の高さが評価され、FIFAにとっても収益面で極めて重要な大会となる。ちなみに今回の開催権を逃したモロッコは欧州勢のスペイン、ポルトガルとタッグを組む形で、2030年に地中海をまたぐ新たな大会の開催国となることが決まっている。

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