米中首脳会談を終えたトランプ大統領は5月15日、イラン攻撃再開の決断に近づいているようだ。イランが生き残りに自信を深め、譲歩せずに勝てると踏んでいるためだ。
大統領は中国の習近平国家主席からイラン問題での協力を期待したが、思うような成果を得られず、戦闘再開に向け舵を切った。米・イスラエル軍は停戦の間に準備を完了、早ければ「数日以内」の命令を待つ態勢だ。
2日間の首脳会談を通して目を引いたのは追従とお世辞を繰り返すトランプ大統領に対し、「大国」の指導者として毅然と振る舞う習主席の自信に満ちた姿だった。大統領は会談で「はっきり言おう、あなたは偉大な指導者だ」「本当の友人だ」などと習主席を持ち上げた。歓迎式典に動員された子どもたちにも「心を打たれた」と中国側の政治的演出に感心してみせた。
これに対し、習主席は台湾問題について、対応を誤れば両国は対立、衝突し、「極めて危険な状態に陥る」と強く警告した。台湾問題は中国にとっては「革新的利益中の核心的利益」で、レッドラインを突き付けた格好。主席はさらに新興の大国が覇権国に挑戦した時に戦争が起こり得る「トゥキディディスの罠」を回避するよう求め、「建設的戦略安定関係」を構築するよう提案した。
台湾問題が米中首脳会談の席で直接言及されるのは初めてで、「中国が超大国の米国と対等になった」との習主席の自信の表れを象徴するものだ。こうした習主席の発言については国営メディアが会談の最中にも関わらずに速報、中国にとって最優先課題であることを浮き彫りにした。
今回の首脳会談は両国のデタント(緊張緩和)が継続できるかどうかのテストだったが、両首脳は台湾やイラン問題で決裂を避け、経済関係の強化で一致。トランプ大統領はボーイング旅客機200機、大豆などの農産物、原油・天然ガスの売却というお土産をもらい、メンツを辛うじて保った。
「建設的戦略安定関係」とは対立があってもそれを管理していくという習主席の長期的な戦略に基づく考えだ。中国は米国を追い越す大国になるにはあと3年は必要とみており、時間稼ぎの戦略でもある。トランプ大統領は懸案の台湾への111億ドル(1兆7400億円)に上る兵器売却について、中国との交渉の「取引材料」とし、実行するかどうかの明言は避けた。
トランプ大統領によると、中国が台湾に侵攻した時、米国はどう対応するのかを習主席に問われ、答えないと述べたという。大統領特有の抑止力を高める「あいまい戦術」なのか、答えを持っていなかった準備不足なのかは明らかではない。むしろこうした率直なやり取りがあったことが驚きだ。
会談後の米国の発表では、台湾問題に関する言及は一切なく、米側の喫緊の課題がイラン問題であることが示された。発表では、首脳会談ではペルシャ湾の要衝ホルムズ海峡の開放、海峡の「軍事化」に反対ということで一致し、中国がイランに武器装備品を売却しないことでも合意したという。
イランの核開発についても、両首脳が「核を保有させない」ことでも合意したとされる。しかし、中国は米国側が発表したこれらの点については触れていない。
海峡の「軍事化」という文言にしても、米側の海上封鎖を指している可能性もあり、イランを批判したとは限らない。米側が良いとこ取りした懸念もある。
中国にとってイランはペルシャ湾岸諸国の連携国であり、首脳会談の直前にイランのアラグチ外相が訪中、戦争について話し合っている。ホルムズ海峡は中国が輸入する原油・天然ガスの40%が通過、イランからの原油輸入は全体輸入量の10%強にも達する。