「ロシアに押し戻す!」ウクライナの戦略転換に動揺するプーチン、パニックに陥っている兆候も…戦況の変化もプーチンが強硬姿勢を強める理由

2026.06.03 Wedge ONLINE

 一つは、5月9日の戦勝記念日に停戦を呼び掛けたこと、また「戦争目的と、『特別軍事作戦』に関する説明の仕方」の「見直し」など、最近のロシア側の言動を「ロシアの後退」を示すものと解するには無理があることだ。

 戦勝記念日における「停戦」の呼びかけは昨年も行っており(但し守られていない)、停戦期間が終わればそれまで同様、あるいはそれ以上の攻撃が続いた。

 また、プーチンは本年の戦勝記念式典終了後のロシア・メディアとの対話で、「戦争は終結に向かっている」と述べたと報じられているが、実際の発言は「事態が収束に向かう」と抽象的に言っただけで、問題はどのように「収束」するかであるにも拘わらず、その点についてこれまでの主張を変更したと解すべき材料は見当たらない。

 さらに、ロシア側がドンバス制圧を重視しているのも戦争当初から一貫した対応であるが、それはウクライナ支配の一段階に止まる。現に5月初めには、ウシャコフ外交担当大統領補佐官が改めて、これが「交渉の前提条件」であると確認している。

 要するに、最近のプーチン政権の発言を仔細に見れば、多少の修辞上の違いはあっても、これまでの主張の延長にあるとする以外の解釈は難しいのである。

 一層の強硬姿勢に出る可能性を考えるもうひとつの、かつ、より本質的な理由は、プーチンの実体験からくる信条だ。プーチンはこれまでいくつもの危機的状況に直面してきたが、その都度、引き下がるのではなく、逆に一層の強硬姿勢で臨むことで乗り切ってきたという「成功体験」をもっている。

 例えば、02年のモスクワ劇場占拠事件や04年のベスラン学校占拠事件では、大量の人質の生命を犠牲にしてでも強硬策により制圧した。チェチェンに対しては空爆を含む圧倒的な火力投入で制圧し、09年には紛争の終了を宣言した。さらに最近では23年、武装反乱を起こしかけたワグネルのプリゴジンも、「航空機事故」で死亡させることで、軍に対するコントロールを取り戻した。

「核の脅し」や「ハイブリッド戦」を強化か

 ただ「一層強硬に出る」と言っても、露側も武器・弾薬、人員の不足という客観的諸条件が一定の制約として働くことは間違いなく、その場合、プーチンは戦場での劣勢を「核の脅し」や「ハイブリッド戦」をこれまで以上に強化することで補おうとするだろう。

 「核の脅し」については、ウクライナへの全面侵攻開始以来、ロシアは核攻撃を示唆する発言を繰り返し、24年には「先制核攻撃」を可能とするよう軍事ドクトリンを改訂、25年後半にはベラルーシに超極超音速核弾道ミサイルと称する「オレシニク」を配備したが、この流れをさらに推進するだろう。

 もうひとつは、ウクライナを支援する欧州諸国へのハイブリッド攻撃の強化だ。ウクライナはもちろん、ドイツなど欧州でのウクライナ向けドローン生産工場の妨害、選挙介入、海底ケーブルの切断、サイバー攻撃、放火等々、これまでも行ってきた破壊活動や情報戦・認知戦をさらに強化する可能性がある。

 今後、プーチンがどのくらい強硬姿勢を維持できるかの見通しは難しいが、西側諸国にとって重要なことは、制裁を含めロシアに対する圧力の手綱を緩めないことだ。ウクライナが多大な犠牲を払って築いてきたロシアに対する相対的な優位性をさらに拡大するために支援することが重要だ。

 

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