国際システム再統合でロシアが依存する「混沌の優位」が崩れる日、これからロシアがなすべき4つのこと

2026.10.07 Wedge ONLINE

 ロシア科学アカデミーのアナリスト、アンドレイ・コルトゥノフ氏がForeign Affairs誌(web版)への9月10日付け寄稿論文において、ロシアは依然として大国であるが、その影響力は、分断された世界情勢を巧みに利用し、自国の強みを活かしているからに過ぎず、国際社会が再び安定してくればその優位性は弱まるとして、「国際システム再統合のリスク」に備えるべき、と主張している。

(Sloniki/gettyimages)

 筆者のアンドレイ・コルトゥノフ氏は、メドヴェージェフ大統領時代に海外の研究機関との交流を進めることなどを目的に設立されたシンクタンク、ロシア国際問題評議会(RIAC)の事務局長を務めた研究者で、ロシアの体制内にありながら、同時に欧米の研究者等とも交流を維持し、ロシアと西側との橋渡し的役割を果たしている。

 本件論文で、コルトゥノフ氏は、(1)ロシアが「実力以上の影響力を発揮し続けている」のは、ロシアが「分断され予測不可能な世界情勢を巧みに利用し、自国の強みを活かしているから」に過ぎず、そのような状況は永続するとは限らない。

(2)いずれ「世界の無秩序状態が収束して、国際システムが再び統合」される時がくる可能性が高い。

(3)国際社会が再び安定し、米国が大西洋同盟、多国間主義、自由貿易を重視する方向に戻れば、ロシアが依存してきた「混沌の優位」は弱まる可能性があるので、ロシアは、その時に備えるべきである、と主張する。

 その上で、ロシアが具体的になすべき措置として、特に以下を列挙している。

① 国家間の高いレベルの信頼と透明性、そして安定した法的枠組みの構築。

② 中国だけではなく、特に欧州連合(EU)との間に長期かつ安定したパートナーシップを築くこと。

③ 民間セクターへの統制強化ではない、国家と民間企業との相互作用の新たな形態を模索すること。

④ 「力こそ正義」の発想は長期的に危険であり、国際法や国際機関を支援すべきこと。

 しかし、今日の国際情勢に関するロシアの「公式見解」は、コルトゥノフ氏の論文の主張とは全く異なるものであり、多極化の一層の進展と、その主たるプレイヤーの一つであるロシアの高い地位を宣揚し、西側世界の「衰退と分断」を強調するというものだ。ロシアの影響力の発揮が「分断され予測不可能な世界情勢を巧みに利用」した結果に過ぎないとか、あるいは将来、「世界の無秩序状態が収束して、国際システムが再び統合される」などと言うのは、「公式見解」とは異なる。

避けているウクライナ侵攻の問題

 ロシアが国際社会の分断と予測困難さを巧みに利用することで、その影響力を維持しているとの見方は正鵠を得ている。これに対し、「国際システムが再び統合される」可能性が高いとの見方には議論があるだろう。

 西側の研究者の間では、むしろ今の状態は相当長期にわたると見る向きが多いのではないか。いずれにせよ、ロシアの研究者で政権側との関係も維持しているコルトゥノフ氏が、そのような見通しをもち、しかも、それをロシアにとってのリスクと捉えていることは非常に興味深い。

 ただ、このような情勢認識に同意できるか否かにかかわらず、結論として同氏が指摘する「ロシアがとるべき措置」は、まったく正しいもので、この点は強調しておきたい。

 コルトゥノフ氏がこの論文で巧妙に避けている論点がある。それはロシアによるウクライナ侵攻の問題だ。同氏が指摘する措置がいま特に必要とされる最大の理由は、プーチンによる主要な内外政策の多くが「ウクライナ侵攻の成功」(=ウクライナの支配)という目的達成の犠牲になっているからに他ならない。

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