「経験は積んできた。会議でも発言できる。場の空気も読める。責任も役割も果たしているし、大体のことはわかる。毎日ちゃんと働いている――でもなぜかずっとしんどい」
「腹が立つはずのことに、何も感じなくなる。うれしいはずの評価にも、反応が薄くなる。休日に休んでも、回復した感じがしない。新しいことを考える余白もなくなる」――
このしんどさは、気のせいでも、年齢のせいでも、根性のせいでもない。本連載では、作業療法士としてのべ5万人の「働く人」と向き合ってきた著者が、「なぜかずっとしんどい」の正体に一つずつ名前をつけ、毎日の中で自分を取り戻していける小さな手がかりを提示する。答えは自分の中ではなく、働き方と身体の繋がり方の中にある。
「自分でやった方が早いんだよな」
40代を過ぎると、大体の仕事がわかるようになります。
だから仕事を誰かに任せようとすると、大体そんな思いに至ります。
というか、かなり思うことが多いです。
誰かにお願いしようとすると、まず説明がいる。
「前回の資料を参考にして」
「ここの数字だけ確認して」
「あ、そのやり方じゃなくて」
で、終わったら確認する。
ちょっと違っていたら直す。
ここまで想像したところで、「…もう自分でやるか」となる。
自分なら30分。たぶんミスもしない。
今日も無事に一件終了。
よかったよかった。
なのですが。
これを半年くらい繰り返すと、なぜか自分の仕事はまったく減りません。
むしろ増えています。不思議ですね。
仕事を減らすために自分でやっているのに、仕事が減らない。
かなり性能の悪いライフハックです。
もちろん、本当に自分でやった方が早い場面はあります。
人手が足りない。
納期が近い。
失敗すると顧客に迷惑がかかる。
「任せることが正義です」みたいな話をしたいわけではありません。
そんな余裕のある職場ばかりなら、そもそも困っていない。
ただ、一つ気になることがあります。
今日だけ見れば、自分でやる方が30分で終わる。
でも、その仕事を半年間ずっと自分でやっていたら、それは本当に「30分で終わった」と言えるのか。
部下や後輩に任せない。
従って彼らは経験しない。
経験していないから、次も聞いてくる。
それを見て、「やっぱりまだ任せられないな」となる。
そしてまた、自分でやる。
きれいです。
循環としては、ものすごく完成しています。
本人は毎回、かなり合理的な判断をしている。
なのに、その合理的な判断を積み重ねた結果、「自分しかできない仕事」が出来上がっていく。
ここが、仕事の面白くて面倒なところです。