「経験は積んできた。会議でも発言できる。場の空気も読める。責任も役割も果たしているし、大体のことはわかる。毎日ちゃんと働いている――でもなぜかずっとしんどい」
「腹が立つはずのことに、何も感じなくなる。うれしいはずの評価にも、反応が薄くなる。休日に休んでも、回復した感じがしない。新しいことを考える余白もなくなる」――
このしんどさは、気のせいでも、年齢のせいでも、根性のせいでもない。本連載では、作業療法士としてのべ5万人の「働く人」と向き合ってきた著者が、「なぜかずっとしんどい」の正体に一つずつ名前をつけ、毎日の中で自分を取り戻していける小さな手がかりを提示する。答えは自分の中ではなく、働き方と身体の繋がり方の中にある。
かつて某栄養ドリンクのCMで「24時間戦えますか」というコピーがありました。
いま聞くと、なかなかすごい。
会社が本気でこれを言ったら、普通にアウトです。
ブラック企業。
長時間労働。
コンプラ。
でも当時は、この言葉が社会へ溶け込んでいました。
現在40代の私はまだ子供でしたが、このメロディもフレーズもよく覚えています。
父親や周りの大人たちの働きぶりも、この空気を体現していました。
その名残りが、やがて社会に出た私たち自身の内側にも、いつの間にか入り込んできている。
忙しい人は、えらい。
無理がきく人は、頼れる。
休まない人は、責任感がある。
もちろん、いまは違います。
ワークライフバランスも大事。
健康も大事。
休むことも大事。
そんなことは、頭ではわかっている。
でも、ここがややこしいんです。
早く帰れる日なのに、落ち着かない。
有給を取ると、少し申し訳ない。
返信を明日に回せばいいのに、スマホを開いてしまう。
休んでいるはずなのに、頭の中ではまだ仕事が続いている。
もう誰も「24時間戦え」とは言っていない。
なのに、自分の中のどこかが言う。
本当に帰っていいのか。
本当に休んでいいのか。
本当に止まっていいのか。
この感覚を「休めないOS」と呼んでみます。