【激戦州テキサス、ミシガンを分析】「隠せる」民主社会主義と「隠せない」トランプ 2026年米中間選挙第7回

2026.10.08 Wedge ONLINE

 米国民はAIに対して強い懸念を抱き、厳格な規制を望んでいるにも拘わらず、トランプは、習近平国家主席との会談で危機管理のために継続してAIについて対話を続けることで一致したのみで、具体的な対策を示さなかった。「アフォーダビリティ(衣食住を無理なく支払える程度で手に入れられるとの意味)」、「地球温暖化」および「ロシア疑惑」と同等、トランプは「AI脅威論」を「でっち上げ」と決めつけて「産業革命よりも大きくなるこの技術の成長を、私が阻止することは決してない」とAI促進の決意を示している。

 さらに、トランプはAIに対する規制強化は「中国を利するだけだ」と議論している。しかし、トランプのAI規制反対とデータセンター建設支持の裏には、トランプの利益、即ち、ファミリービジネスの存在がある。トランプの長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏は、投資会社「1789キャピタル」のパートナー(共同経営者)であり、同社はデータセンター開発企業へ投資を行っている。

AIを巡る論争で民主党有利

 トランプとは対照的に、タラリコとエルサイードは有権者が抱くAIに関する懸念や要望に対して、具体的な政策を提案している。

 例えば、タラリコは「雇用を守ること」「子供を守ること」および「民主主義を守ること」の3つを挙げた。まず彼は、AIによる自動化で、労働者の雇用が奪われるのを防ぐための規制を求めている。次に、AIチャットボット(AIを活用して人間と自然な対話を行う自動応答プログラム)から子供の安全を守るために、連邦レベルのルールの策定を訴えている。

「民主主義を守ること」に関しては、選挙運動において有権者を欺くAIによるディープフェイク(偽の映像・画像・音声)の全面的禁止を主張している。今回のキャンペーンでも共和党側は、タラリコが女性のドレスを着た広告を流した。勿論、AIによって制作されたものである。これにより、タラリコに「弱いリーダー」というイメージを与えると同時に、彼が過去にトランスジェンダー寄りの発言をしていたことも想起される広告である。

 ちなみに、タラリコ陣営は、AI技術を活用して制作された広告やコンテンツを一切使用せず、人間により制作された広告を用いていると言う。

 一方、エルサイードは、民主的な監視を伴う公的利益のための「公益信託組織(Public Trust Organizations)」の創設を提唱している。その上で、大手AI企業における株の50%を公的(政府)所有とし、そこから得られた利益を国民に還元する「年間AI配当(Annual AI Dividend)」の支給を提案している。この政策の狙いは、AIを一部の富豪ではなく、公衆の利益にすることである。

 また、エルサイードは、連邦食品医薬局(FDA)のような、連邦公的監視機関を設置してAIの安全性を管理・テストする必要性を訴えている。加えて、国際的なAI管理条約の締結の必要性も指摘している。

 前で紹介したクイニピアック大学の調査によると、「AIの影響に関してどちらの党がより上手に対処すると考えますか」という質問に対して、42%が民主党、29%が共和党、13%が「どうちらも同じ」、16%が「分からない」と回答し、AIの管理について民主党が共和党を13ポイント上回った(図表2)。AIに関する論争では、民主党が共和党に対してより多くの有権者の支持を得ている。

「隠せる」と「隠せない」の差

 タラリコとエルサイードには共通の選挙戦略がある。タラリコは、全米民主社会主義者(DSA: Democratic Socialists of America)のメンバーではなく、本人は「私は社会主義者ではない」と断言し、自身を資本主義者と呼んでいる。タラリコにとって重要なのは、キリスト教的な道徳的価値観によって、自身と権力乱用などの容疑による弾劾から免れたパクストンを有権者に比較させることである。

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