「猫を飼うと結婚できない」説は本当か徹底検証

犬好き・猫好き、恋人がいる率が多いのは?

しかし、だからといって、「犬好きは結婚できる」「猫好きは生涯独身」とまでは言えません。同調査から、未婚男女だけを抽出し、犬好きと猫好きとを分けて、各々どちらが現在恋人がいるのかをクロス集計してみました。

年代別に多少バラつきはありますが、未婚でも恋人がいる男女は、全体的に「犬好き」が多いことがわかります。特に、40代男性は40%以上、30代女性はなんと60%以上も犬好きのほうが多くなっています。反対に、「今まで一度も恋人がいたことのない」グループは一部「犬好き」が上回っている部分はありますが、20代男性と30代女性では約20%も「猫好き」が多いようです。つまり、犬好きのほうが恋愛強者が多いということです。

さらに深掘りりしていきます。配偶関係別の性格によって違いはあるか、についてです。

ここでは、ビッグファイブという最も信憑性があるとされている性格分析の理論を活用します。ビッグファイブとは、アメリカのオレゴン大学名誉教授であるルイス・ゴールドバーグが提唱した「私たちの性格は次の5つの性格因子の組み合わせによって決定される」という考え方で、5つの因子とは、「協調性」「開放性」「誠実性」「外向性」「精神安定性」となります。

それによると、おもしろいことに猫好きと犬好きとで明確な違いが出ました。犬好きは、猫好きと比較して、未既婚問わず圧倒的に「協調性」が高くなっています。一般的に、未婚より既婚の方が協調性因子は高いのですが、こと犬好きに関しては、未婚の方が既婚を上回ります。

未婚の猫好きと犬好きを比較した場合、猫好きは「外向性」「情緒安定性」がマイナスです。つまり、猫好きは、内気でコミュ力が弱く、加えてややメンタル耐性が低いという傾向があるようです。

猫好きの方が「開放性」が高い

一方で、犬好きよりも猫好きの方が「開放性」が高く、これは、豊かな想像力、拡散的思考力と芸術的感受性が強いということを表します。「誠実性」も未既婚で逆です。これは真面目さを表す指標ですが、猫好きは1つのことに集中しやすく、犬好きは飽きっぽいという傾向があることを示唆します。一つひとつ確認すればするほど、なるほどと納得してしまいます。

大ざっぱに結論付けるとすれば、犬好きの性格とは、人と共同で何かをするのが好きで、共感力があり、社交性にあふれているのに対し、猫好きは、1人で黙々と創造的作業をするのが好きな職人気質ということがいえるでしょうか。

今までいろいろなデータを見てきてわかるとおり、「犬と結婚と家族」「猫と独身と1人」という親和性はかなり高いものがあると言っていいでしょう。しかし、だからといって、「猫好きは結婚できない」というわけではないし、「既婚者は犬好きしかいない」わけではありません。犬好きか猫好きかが結婚に結びつくというよりは、どちらかといえば本人の性格によるというほうが正しいかもしれません。

未婚と既婚とで幸福度に大きな差

未婚と既婚とでは幸福度に大きな差があります。一般的に、既婚の方が未婚より幸福度が高いのですが(詳細はこちら『なぜか自己肯定感が低い日本の未婚男性の実像』)、その要因の1つに、ストレスホルモンの分泌を抑制する効果のあるオキシトシン分泌量の違いがあります。

オキシトシンは人間同士のスキンシップによって分泌されるホルモンでもあり、別名「愛情ホルモン」と呼ばれます。スキンシップのできる配偶者や子がいる既婚とそれらのいない未婚との違いが幸福度の違いになっている点も否定はできません。

しかし、オキシトシンの分泌は、人間同士だけではなく、ペットとのスキンシップでも促進されます。未婚化、非婚化に伴うソロ社会化で、特に20~40代の飼い主で猫飼育数が増えているという事実は、ある意味「結婚以外でオキシトシンを獲得する」という1つの代替行動なのかもしれません。「恋人がいない」方が猫好きが多いというのも、恋人がいなくても猫によって愛情欲求が満たされてしまうからとも考えられます。

とすると、単に「猫が好き」というだけならまだしも、猫をペットとして共に暮らしてしまうと、愛情が満たされてしまい、恋愛や結婚をする必要性を失うということになります。となると、「猫好きは結婚できない」という言説もあながち間違いではないということになります。

それはそれで1つのしあわせのカタチですが、とはいえ、中には猫好きだけれどどうしても結婚はしたいという人もいるでしょう。そういう方は、猫を飼うのではなく、ネットの動画を見ることまででとどめておいたほうがいいのかもしれません。