母親たちが阿鼻叫喚「在宅勤務」の辛すぎる実態

2児の母(中学生と小学生)であるリンダ・エスピノサ・デ・ロスも、「夫はとてもよく手伝ってくれるが、勉強の面倒を見る責任は私にかかってくる。彼の仕事は私の仕事ほどフレキシブルではないからだ」と話す。

エスピノサ・デ・ロスもまた、仕事がある日のスケジュールが大きく変わった。今では学校が指定する教材を準備し、先生たちとZoomミーティングを行い、学校に行けず友達と会えないストレスでかんしゃくを起こす娘に対処し、勉強をチェックし、体育の段取りも行い、ピアノとコーラスのオンラインレッスンも管理しなくてはならない。「私の仕事は一日中あらゆる作業や打ち合わせで埋まるようになった。間違いなくストレスになっている」と、彼女は話す。

『Mommy Burnout(ママの燃えつき)』の著者で、心理学者のシェリル・ジーグラーはポッドキャストで、こうした負担はとりわけシングルの親には大きいと語った。

「シングルの親たちは、毎日をかろうじて乗り切っている。すでに何週間から燃えつき感を抱えている。休む間もなく、助けも得られなければ、限界を超えてしまう。そうとう厳しい状況だ」

ひとつひとつがフルタイムの仕事並み

セラピストで2人のティーンエイジャーを抱えるシングルマザーのジャネット・ジェンセンも日々を乗り切るのに精一杯だ。子どもが10代なら少しは楽だろうと思う人もいるかもしれないが、ジェンセンにとって事はそれほど単純ではない。

彼女の子どもたちは食事や宿題、人間関係の問題、子どもたち自身のZoomミーティングなどで彼女の助けを必要としている。「すべて以前もやっていたことだけれど、今ではこれが一日中、休む間もなくある」。

このほかにも自らの仕事や、政府の支援プログラムへの申請に関わるストレスものしかかっている。「1つひとつがフルタイムの仕事のような大変さで、つねに邪魔が入る状態でこのすべてをこなさなくてはならないなんて」。

こうした状況を改善しようとする母親も出てきている。「私にとって今、セルフケアとは、夫に対して、私も仕事しなくてはいけないのだから、夫にも子どもたちの勉強を見てもらいたいと伝えることだ」とエスピノサ・デ・ロスは話す。彼女はまた、オンラインエクササイズを行う間は邪魔しないことを家族に求め、家族以外のつながりを維持するために、毎週友人たちとビデオチャットを行っている。

ウォルフも友人たちと語り合うことでこの難局を乗り越えようとしている。Zoomやフェイスタイム、グーグルデュオで大学時代の友人に連絡したり、昔の友人にテキストメッセージを送ったり、早朝にピラティスのレッスンに参加したりすることは彼女にとって役立った。

前述の心理学者、ジーグラーは、この新たな環境に適応するために親は期待値を下げ、仕事に罪悪感を感じないようにする必要があると言う。「リモート学習の教師になり、家のことを回し、食卓に料理も並べて、というようなことすべてをこなすべき、と考えるのは現実的ではない」。

大事なのは勉強の出来よりメンタルヘルス

それよりも、今最も優先順位が高いことは、家が安全で穏やかな場所だと感じられるよう保つことだ。「(子どもたちから見て)親が穏やかで、自分の不安に対処し、自己管理し、楽しんだり(笑ったり)していることが今いちばん重要なことだ」とジーグラーはしている。

ジーグラーは今の時期、子どものメンタルヘルスのほうが学業上のパフォーマンスより、はるかに重要だと言う。周囲がSNSに「この状況下で完璧に勉強する子どもたちの姿」を投稿したとしても、それを見て悲観したり、プレッシャーを感じないこと。

友人や近所のママ友がネットに完璧な妻、母、仕事人の姿や、外国語を学んだりする姿をアップしていても落ち込むことはない。あなたは、あなたの家族にとって大事なこと、うまくいくことをやればいいのだ。

「私たちは同じ舟に乗っていない」という詩がある。それにはこう書かれている。

「私たちはひとりひとりが、それぞれの形で、この嵐を切り抜ける。
この嵐の中、私たちはみな別の舟に乗り、それぞれまったく異なる旅路を経験している。そのことを知り、人に優しくしよう」(作者未詳)