「やらされSDGs」多い日本企業に欠けた重大視点

サステナビリティ経営の詳細について解説します(写真:ARTBOARD/PIXTA)
SDGsがブームのように広がっていますが、日本企業の中には、その本質を理解せずに、表面的に取り組んでいるところが少なくありません。前回は日本の経営者からよく聞かれる「日本企業はそもそもサステナブル」という主張の問題点について取り上げましたが、今回はサステナビリティ経営で押さえておきたい「4つの型」について解説します。
※本稿は坂野俊哉氏と磯貝友紀氏の共著『SXの時代~究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営』から一部抜粋・再構成したものです。
前回:「SDGs?日本は昔から三方よし」論に欠けた視点

外圧に対処するためか、自ら進めるか

サステナビリティ経営には、規制などの外圧に対処するための「外発的対応」と、サステナビリティの重要性を理解して自ら進める「内発的対応」がある。外発的対応は「①インシデント型」と「②外部要請型」に分けられ、内発的対応は「③未来志向型」と「④ミッション・ドリブン型」に分けられる。世界の趨勢から内発的対応の重要性がますます高まっている。

①インシデント型

何か大きな事件(インシデント)をきっかけに、企業のあり方が変化する型のこと。インシデントとは、タンカー事故による重油流出、児童労働の発覚、環境NGOからの環境汚染への抗議や糾弾などのことで、こうした出来事がマスコミなどで大きく報道されると、企業価値が大きく損なわれる。遭遇した企業は、すでに顕在化してしまったリスクに「超短期的」にダメージを最小限に食い止める対応をとろうとする。

②外部要請型

政府・地域、投資家、消費者、従業員などの重要なステークホルダーの要請を受けて、環境や社会的な課題に対して受け身的に変化せざるをえないと考えて動く型のこと。多くの日本企業の現状は、この外部要請型に当てはまるだろう。

本音としては「できることなら何もしたくない」ので、外部からの圧力に対してはミニマムのコストでブランドの価値が下がるリスクを抑えよう、というスタンスだ。外部要請型は、環境・社会をめぐる長期的変化への対応ではなく、何もしないと近い将来、外部から批判されるのでそのリスクを抑えることに注力する。インシデント型よりは時間軸が少し長いものの、「リスク」に対して「短期的」に対応している点では共通している。

③未来志向型

環境・社会を含む外部環境の長期的変化や、それによって引き起こされるリスクと機会を理解したうえで、企業の事業全体を新しい変化に適応させていこうとする型のこと。「時間軸が長い」点に加え、リスクだけでなく「機会」を理解している点が、外発的対応の二つの型とは大きく違う。また、リスクも「外部から非難されるリスク」ではなく、「環境・社会の毀損に伴う事業継続に関わるリスク」を理解している点も大きく異なる。

実は、外発的対応の事例のなかには、外部から「機会」の開示を求められて統合報告書などに「社会課題を起点とする機会」を記述している企業もあるが、このタイプとは明らかに異なる。未来志向型の企業は、長期的な視点で環境・社会の動向を考慮し、自ら先頭に立って、能動的、主体的にサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を推進する。

例えば、オランダの化学企業DSMは、もともと国営の石炭採掘企業としてスタートしたが、時代とともにつねに進化しながら現在は飼料やサプリなどの栄養・食品、衣料用素材、低環境負荷のプラスチックや樹脂などを製造するライフサイエンス・マテリアルサイエンスカンパニーにビジネスを変革してきた。

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