データが証明「YouTubeに食われる放送局」の実態

このようなスマートテレビでのアプリ視聴の普及を考慮すると、放送局のいわゆる「視聴率競争」の裏で起こっていることが見えてくる。放送とアプリそれぞれの全体の利用率ではなく、個別の放送局、アプリの視点で利用率を比較してみよう。

以下では、ユーチューブとNHK総合、民放4局系列の平日と土日それぞれの1時間ごとの平均利用率を示した。

驚くのは、テレビ全体の利用率が高くなるおおよそ6~8時台、19~22時台を除くと、ユーチューブの利用率がほとんど1~2位になっていることだ。とくに土日の10~17時台は継続的に1位となっている。

なお、ユーチューブにはクロームキャストなどのストリーミングデバイス経由での視聴は含んでいないため、ストリーミングデバイス経由も含めれば実際の利用率はさらに高いと考えられる。

スマートテレビに関しては、一部の時間帯ですでに放送局ではない新しいプレーヤーが支配力を強めているのが実態といえるだろう。

オンデマンド視聴がテレビでも普及

このようにテレビ受像機に放送とアプリという異なるサービスが混在するようになったことは、テレビ受像機の利用形態にどのような変化をもたらすだろうか。スマートテレビでのアプリ視聴の普及が進む以前の従来のメディア視聴環境との違いから考えてみよう。

従来、放送はテレビ受像機、ユーチューブやネットフリックスなどの動画配信サービスはPCやスマホと結びついて視聴されてきた。放送が持つ「リアルタイム視聴」や「番組表」といった特性はテレビ受像機が持つ「家族の共有物」「リビングにある大画面」という特性と組み合わさることで1つの娯楽形態を形成してきた面があるだろう。

一方で動画配信サービスが持つ「オンデマンド視聴」や「レコメンド」といった特性は、PCやスマホといった比較的画面の小さいデバイスが持つ「個人視聴」という特性と相性がよく、動画配信サービスが急速に成長した一つの原動力になっていたのではないだろうか。

こうしたサービスとデバイスそれぞれの特性を考慮すると、スマートテレビでのアプリ視聴の普及は、「オンデマンド視聴」や「レコメンド」といった特性を持つ動画配信サービスが「家族の共有物」「リビングの大画面」としてのテレビ受像機に進出するというメディア視聴環境の大きな変化と捉えることができる。

このような環境変化はテレビ受像機の利用形態にどのような変化をもたらすだろうか。

これまで見てきた放送、アプリの時間帯ごとの利用率の推移からは、テレビ受像機という同じデバイスにおいても、放送が持つリアルタイム視聴などの特性と動画配信サービスが持つオンデマンド視聴などの特性のどちらが好まれているかが、時間帯によって異なることがうかがえる。

放送がアプリに対して特に優位なのは朝7~8時台、昼12時台、夜19~20時台といった時間であり、アプリが放送に対して接近、もしくは勝っているのは10時~11時台、14時~17時台、深夜だった。

17時ごろまではリビングに1人いて、ユーチューブで自分が好きなコンテンツを見る。18時ごろから食事の時間になるにともなって、家族がリビングに集い、一緒に見るのに適した放送にチャンネルを切り替える。こうした風景が、テレビ受像機の新しい利用形態として想像できないだろうか。

放送局や動画配信プレーヤーはどう戦うべきなのか

食事の時間帯を中心に家族の共有物、リビングの大画面として利用されながら、ときにはPCやスマホのように個人がその嗜好に応じた配信動画を視聴するためのデバイスとしてもさかんに利用される。これが放送、アプリという異なるサービスが混在する新しいスマートテレビの利用形態として考えられる。

新たなビジネスの拡大先としてテレビ受像機をとらえる動画配信プレーヤーも、それを迎える立場の放送局も、このように複雑化するテレビ受像機の利用形態を十分理解しながらサービスを構築する必要があるだろう。

動画配信プレーヤーにとっては、いまだ放送が優位なゴールデンタイムなどの時間帯で存在感を高めていくためのコンテンツや配信方法が求められている。

また、放送局にとっては、すでにアプリの利用率が放送の利用率に接近する一部の時間帯においてTVer(ティーバー)などの動画配信動画アプリを放送と併用することで、放送局としての存在感を維持していく戦略の検討が求められているのではないだろうか。