「やりたいことが見つからない」という人の盲点

自分も複業をしたいけれど、何をしたらいいかわからない……。「やりたいこと探し」のコツをご紹介します(写真:amadank/PIXTA)
「複業家」とは、1つの仕事だけでなく、いくつかの仕事を掛け持ちしながら働く人のことで、「パラレルワーカー」とも言われる。金銭的にも精神的にも安定する働き方として、コロナ禍以降さらに注目度が高まっている働き方だ。
そのパイオニアとして知られる中村龍太氏は、現在、IT企業で週4日働きながら、自営の農家で人参を育てたり、依頼があればドローンで動画撮影をしたり、パエリアづくりを教えたりもしている。なぜそんな多彩な仕事ができるのか。中村氏の著書『出世しなくても、幸せに働けます。 複数の仕事で自分を満たす生き方』から、複業の芽を見つける3つのコツを解説してもらった。

「やりたいこと」を見つけるのは難しい

複業を始めるには、まず自分が「何をやるか」を決めないといけません。ただ、そのために「やりたいこと探し」に必死になり、結果として行動に踏み出せない人をよく見かけます。

複業をやりたい、けれど自分に何ができるかがわからない、何から手をつければいいかもわからない……。そうした状況から脱したいと思っているのに、行動する前に「やりたいことは何か」と考え込んでしまうのです。

複業に限らず、本業でも趣味でも、世の中には「やりたいことを探そう」というメッセージがあふれています。でも、もともとそれがある人はともかく、特にない人がいきなり「やりたいことを見つける」のは、実は難しいものです。

なぜ難しいのでしょうか。それは「やりたいこと」というのは、実は自分が置かれた環境に制約を受けるからです。たとえば僕にとって、マイクロソフト時代の「やりたいこと」といえば、マネージャーとして活躍し、出世することでした。でも今思えば、それは会社の枠の中で考えたこと。会社に期待されている役割そのものでした。心の底から湧き起こった気持ちではなかったのです。

コツ①「他力本願」で探す

「やりたいこと」を探している人に僕がまずアドバイスしたいのは、やりたいこと探しは「他力本願でいい」ということです。

自分の心の底から「やりたい」という気持ちが湧き起こったのは、農業クラブや母校でのキャリア教育といった社外活動がきっかけでした。周囲の人に誘われて、なんとなく始めた活動でしたが、やってみると思いのほか、「もっとやりたい」という気持ちが強まったのです。これは決して、探したから見つかったものではありません。人の誘いに軽い気持ちで乗っかった先に、見つかったものです。

もちろん、本業を心の底から「やりたい」ことだと感じていれば、それを突き詰めればよいでしょう。ただし、自分が置かれた環境からいったん離れることで、結果的にやりたいことが見つかるケースもあるのです。だから、誰かに誘われたら乗ってみる。身を委ねて、新たな経験に踏み出してみてはいかがでしょうか。複業を見つけるのは「他力本願でいい」のです。

独りよがりの「好きなこと」ではダメ

ただし、気をつけなければいけないのは、「やりたいこと」が独りよがりな「好きなこと」ではいけないということ。もちろん趣味であれば「好きなこと」で構いません。ただ複業としてやるからには、他人の役に立ち、「ありがとう」と言われるものがお勧めです。

「ありがとう」と言われるということは、そこに需要があるということ。需要がないのに続けても、事業の継続は難しく、いずれ疲弊してしまうでしょう(「ありがとう」をもらえることであれば、金銭的報酬はなくても構いません)。

僕は自分の経験を「"好きと生きる"複業講座」でお伝えしています。ただ、そこで「好きと生きる」と表現しているのは、決して「好きなことを複業にしよう」という意味ではありません。そうではなく、人の役に立つ複業を通して、自分のことを好きになったり、自分が好きだったことを再発見したりする、そんな働き方を提案しています。