「絵が下手な人」と「上手い人」、ただ2つの決定的差

そうすると、右側の辺が左側の辺よりも短くなり、長方形の形は「ゆがみ」ます。この「ゆがみ」がスマートフォンに奥行きを与え、「立体的」に見せることができるのです。

長方形の左端には、スマートフォンの厚みを表す「細長い長方形」を描き込めば、絵がよりリアルに見えます。左下には、スマートフォンが台に反射して見えている「三角形」の像を描き入れましょう。

長方形の上辺から点線で示した三角形を取り除き「ゆがみ」をもたせることで立体的に見える(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

さらに、角に丸みをつけ、「アイコンボタン」を描き込み、光の方向を意識して「陰影」をつけると、美しい硬質感を表現することができます。

長方形に「ゆがみ」を持たせることで表現した奥行き、しっかりと描き込んだ縁の厚みによって「立体感」が表現され、まるで本物のような「スマートフォンの絵」を描くことができるのです。

陰影にメリハリをつけ、画面は薄く塗ってから指でぼかして仕上げた「スマートフォン」の完成図(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

「絵が下手な人」と「上手い人」は、「本」の描き方にも差があります。それは「遠近感」の有無です。

【決定的な差②】「遠近感」の有無

私は本を読むのが好きで、アートと同じくらい、人生に欠かせない存在です。そんな身近な「本」も、立派な絵の題材になります。

でも、これにはちょっとしたテクニックが必要です。「本」を真正面から見たときは長方形に見えますが、「ただの長方形」を描いても「本」には見えません。なぜなら、そこに「遠近感」が表現されていないからです。

本を真正面から見た形。しかし「ただの長方形」を描いても、リアルな「本」の絵にならない (出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

近くにある物体は大きく、遠くにある物体は小さく見えます。ひとつの物体においては、手前にあるパーツは奥にあるパーツよりも大きく見えます。また、手前から奥に向かう線は傾いて見えます。

つまり、この「遠近感」を絵の中に表現することで、まるで本物のような、いきいきとした絵が描けるのです。

「本」をリアルに見せる配置

本を、少し離れたところに、斜めに角度をつけて平らに置いてみましょう。この配置が「長方形」という形を変化させ、「本」をリアルに描くことを可能にします。

私の「30分で『本』を描く」レッスンでは、はじめに大きな三角形を描いて、「遠近感」を表現する練習をします。

まず、スケッチブックの幅いっぱいに、大きな下向きの三角形を描きます。下の2辺の上に、1カ所ずつ「しるし」をつけ、それぞれを上辺の両端の遠いほうの点と結びます。

そうすると、大きな三角形の中に、新しい2つの三角形ができますね。2つの三角形が重なってできた四角形の部分に「本の設計図」を配置します。

ここで、上辺の両端の点を「消失点」と呼びます。絵の中のすべての線は、水平線上に並ぶ2個の「消失点」に集約され、正しい「遠近感」を表現することができます。この技法は「二点透視図法」と呼ばれています。

さらに、大きな三角形の下の頂点から、少し下の場所に「しるし」をつけ、両側の「消失点」とつなぐと、「本の厚み」を表現する線になります。

はじめに大きな三角形を描き、その中に本を配置する方法で描いた絵(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)

つまり、「絵が上手い人」は、「遠近感」を意識して、絵の中で物体の大きさ、距離、形などを表現できているのです。それが「リアルな絵」に見せる秘訣でもあります。

「遠近感」「二点透視図法」という絵画の用語が出てきて、不安になった人もいるかもしれませんが、心配はいりません。『誰でも30分で絵が描けるようになる本』には、「絵を描くコツ」がふんだんに盛り込まれています。