コロナ禍で変わった「3年で3割が辞める」の実情

早期退職は悪い側面ばかりではない (写真:USSIE/PIXTA)

コロナ禍となり、3度目となる新入社員が入社した。4月に入社し、新入社員研修を終え、GWの長期休暇を経て、すでに本格的に業務に取り組んでいる時期だろう。

企業はコロナ禍に対応して、選考や研修をオンライン化したり、社員のエンゲージメント(定着度)を改善すべくリモートワークを導入するといった対策を講じている。新入社員もコロナ禍による劇的な環境変化によって、ただでさえ順応が難しい「社会人1年目」に苦労していると思われる。

「3年3割辞める」は景気に左右される

筆者は、かれこれ10年以上、UZUZという会社で若手人材と企業をマッチングする仕事をしてきた。特に「第二新卒(新入社員として入社した会社を3年以内で辞めた人材)」の就業支援に注力しており、筆者自身も新入社員として入社した会社を3年で辞めている。

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若手人材と企業のマッチングを行っていると、企業から、「コロナ禍によって新入社員の離職率が上がってしまうのではないか」という心配の声をよく耳にする。ただ、結論としては、「そこまで心配しなくていい」というのが答えだ。

皆さんも「新入社員は3年で3割辞める」と言われていることは知っているだろう。厚生労働省が毎年公開している「就職後3年以内離職率の推移」によると、大卒者の3年以内離職率は多少の差はあるが、過去34年間で、最も低い水準で「23.7%(1992年)」、最も高い水準で「36.6%(2004年)」という結果となっている。

一見するとそこまで変わらないように見えるが、最大の2004年と最小の1992年の差は約1.5倍となっている。新入社員が100名入社する企業に例えると、離職率が低い年度は3年以内に24人しか辞めず、高い年度だと37人が辞める計算になる。これは企業側にとっては無視できない差だ。

3年以内離職率のグラフを見ると、離職率が「高い時期」と「低い時期」には一定のトレンドがあることがわかる。多少の違いはあれど、離職率のトレンドは次のようになる。

好景気の時:3年以内離職率は上昇
不景気の時:3年以内離職率は低下

厳密には、その時の「求人数(仕事の数)」と「求職者数(仕事を探している人の数)」の状況によるが、ざっくりトレンドをつかむという意味であれば、「好景気だと新入社員は辞めやすく、不景気では新入社員が辞めづらい」となる。過去のデータを見ると、コロナ禍で不景気となっている現状では「3年3割辞めるは減少傾向」となる。

コロナ禍で激変した「普通の働き方」

コロナ禍によって特に変わったことの一つに「働き方」がある。コロナ禍以前は「リモートワークできる職場」というのは、それだけで価値が高く、多くの人が転職先を選ぶ条件にしていた。

リモートワークは、採用する側の企業にとって「武器」だったが、現在は「リモートワーク可」とうたっても、以前ほどのアピール力はない。しかし、これはあくまでも「珍しくなくなった」だけであって、リモートワークできないことが「転職理由になりうる」とも言える。

総務省の「テレワークの実施状況」によると、もともと17.4%だったリモートワーク実施率は、1回目の緊急事態宣言によって56.4%まで上昇している。ただ、2回目の緊急事態宣言では38.4%に留まっていることからも、恒久的なリモートワーク環境への移行は、半数以上の企業で進んでいないことがわかる。

また、選考や営業活動においても、コロナ禍でオンライン化が進んだ印象はある。オンライン面談や商談にしても、コロナ禍以前は「相手を軽んじている」と思われ敬遠されていたが、コロナ禍で必要に迫られて導入された。そして実際にやってみると、相手を軽んじているわけでもなく、むしろ移動コストが削減されることから、採用や営業現場で好意的に導入されている。