ドラマ「同じ人ばかり出ている現象」なぜ起きる?

「何人いるんだ?」記録をどれだけ伸ばしたいのかと思わせた(本人はそんなことを思っていないだろうけれど)。彼もまた、まずビジュアルを大きく変えて印象を同じにしないように徹底的に作り込み、変化の演技を楽しんでいるような気すらする、その気迫が心を打つ。

山田裕貴
大河ドラマ『どうする家康』ではちょんまげに袴姿、映画『東京リベンジャーズ2』では金髪で特攻服に身を包んだ山田裕貴(画像は各作品の公式サイトより)

山田以上に「何人いるんだ?」状態なのが、前田敦子である。

4月期に『かしましめし』(テレビ東京系)、『育休刑事』(NHK)、『ウツボラ』(WOWOW)、7月期は『彼女たちの犯罪』(読売テレビ、日本テレビ系)と出ずっぱり。

前田敦子の場合、彼女は何人いるんだ? というよりも、歌番組に毎週出ているヒット歌手のような印象でなぜかすんなり受け入れやすい。それは彼女が、その存在をずっと見続けることに重要性があるアイドルグループ・AKB48出身だからだろうか。

俳優業に並々ならぬ意欲を燃やす前田は、意外と演じる役によって印象が変わる職人っぽさがあるのだが、と同時に、毎回リリースする楽曲によってヘアメイクも衣裳もガラリと変わるようなアーティスト的な見え方も喚起させる。

前田敦子のあり方が、昨今のテレビドラマの出演者の顔ぶれが似ていることのヒントになるのではないか。

つまり、現在のテレビドラマは、物語を楽しむよりも、いま人気の俳優を認識し、楽しむ、歌番組に近いのである。

ドラマの内容は、医療もの、刑事もの、恋愛ものなどとシンプルでよく、知名度の高い人気俳優への好意や信頼によって興味を持たせ、さらに、内容が多少ゆるくても、俳優の魅力でカバーできるのだ。

赤楚衛二、小芝風花、坂口健太郎、波瑠、松下洸平、山本耕史などはまさに、いま、常に人気と信頼ベスト10入りし続けているような俳優である。もともと、テレビドラマは、世間の好感度を意識して作られているから、俳優の知名度、好感度は起用の重要な要素である。

あまりにも影響力のある「朝ドラ」

赤楚は、2020年の「チェリまほ」こと『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)でブレイクし、今年3月まで放送されていた、朝ドラこと連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK)でヒロイン(福原遥)の相手役に抜擢され、知名度を全国区に広げた。その後、4月期『風間公親―教場0―』『ペンディングトレイン』、7月期『こっち向いてよ向井くん』に連続出演している。

前出の坂口健太郎は、2021年の朝ドラ『おかえりモネ』(NHK)で、ヒロイン(清原果耶)の恋人・菅波光太朗を演じ、SNSを中心に「#俺たちの菅波(坂口が演じた役名)」と全国的に話題となって以降、起用が増えた。

松下洸平は、舞台で活躍していたが、2019~2020年、朝ドラ『スカーレット』のヒロイン(戸田恵梨香)の相手役で知名度を拡大、4月期『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~』(関西テレビ)、7月期『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)に出演している。いずれも、ヒロインのパートナー的存在を演じている。

こう見ると、“朝ドラ効果”は大きい。

4月期『私のお嫁くん』(フジテレビ系)、7月期は『こっち向いてよ向井君』に出ている波瑠は、2015~2016年、朝ドラ『あさが来た』のヒロインを演じたことで全国区に認知度を上げ、活躍し続けている。

彼ら、彼女らはいずれも、イメージが明確で、清潔感があり、好感度が高く、CMに起用されやすいタイプである。彼らは、その演技巧者の部分を、同じようなイメージを保ち続け、視聴者の期待を決して裏切らない部分で存分に発揮している。