【昭和のおじさんVS令和のZ世代】ドラマ「不適切にもほどがある!」に見る世代を超えた価値観「働き方改革」「コンプライアンス」、宮藤官九郎による世界観と提案

2024.02.16 Wedge ONLINE

 「不適切にもほどがある!」(TBS・よる10時)は、クドカンこと宮藤官九郎が脚本を手がけるタイムスリップ・コメディの大傑作である。クドカンのドラマならではのパロディとギャグも満載だ。

 

 主人公の中学校の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)が昭和と令和をタイムスリップしながら、現代社会の断裂の要因となっているコンプライアンスというポリティカル・コレクトネス(PC)の解決を探る正攻法のドラマでもある。

「働き方改革」の歪みをコミカルに

 野球部の根性一辺倒の監督でもある小川(阿部)は、帰宅のために中学校の裏手のバス停から無人のバスに乗り込んだときからタイムスリップは始まる。小川は1935(昭和10)年生まれ、現代なら88歳の設定である。

 バスに次々に乗り込んでくる客たちに小川は驚きを隠せない。愛煙家の小川が煙草に火をつけようとすると抗議され、女子高校生のスカートは短く、客たちは小川のいう「ひらべったい」機器つまりスマーフォンを使っている。コンビニで購入したハイライトの値段が500円を超えていることにも。

 行きつけの喫茶店に入ると、老いたマスターは客席に寝たままの状態。カウンターに座っていた乳母車を脇に置いて子どもを寝かしつけていた、犬島渚(仲里依紗)が、小瓶のビールを小さなグラスに注いだのを、小川は動揺した状態のまま飲み干してしまう。「今日一日働いてこれを楽しみにしてきたのに!」と渚は怒り出す。

 渚はテレビ局のアシスタントディレクター。アシスタントプロデューサーに昇格することになって、業務の引き継ぎに入っていた。

 後任に教えていると、夕方の時刻となると「わたしはここまでで交代です」と、別のアシスタントディレクターに同じように引き継ぎをするはめになる。「働き方改革」によって、超過勤務を回避するPCである。

 小川は渚に同情してテレビ局に乗り込む。クドカンがPCの解決策はミュージカル風のダンスと歌で提案する。ひとつの仕事をふたりで分担するには、まずひとりがすべての業務を理解してからにするなどと。

 これがきっかけとなって、小川はなんとテレビ局のカウンセラーとなる。「裏がジブリじゃしょうがないじゃない。コア視聴率は変わらないんだから、胸張って歩け」と心身に支障がでた相談者を励ます。

ミュージカル調で解決策を提示

 第3回「可愛って言っちゃダメですか?」(2月9日)に至って、タイムスリップの謎が解き明かされる。小川が未来にやってきたバスは、彼の教え子で野球部員だった井上昌和(三宅弘城)が令和に発明したものだった。このバスでは、井上の離婚した妻の向井サカエ(吉田羊)と息子の中学2年生のキヨシ(坂元愛登)が昭和にやってきてしまった。

 社会学者のサカエは昭和時代のコンプライアンスを研究するためにやってきた。そして、キヨシは小川のひとり娘で高校2年生の純子(河合優実)にひとめぼれしたのだった。

 物語は、小川が令和と昭和を往復するごとに、過去と現在が交差しながら進んでいく。タイムスリップはバスによるほか、小川の行きつけの喫茶店のトイレの壁にある穴がポスターでふさがれているのをきづいて通り抜けたりする。

 昭和から令和へ。男性側が小泉今日子のデビュー当時のポスターだったのに、ポスターを小川がはがしてそこにある穴から抜けると、そこには「小泉今日子 デビュー40周年」とある。そして令和から昭和へ戻ろうとすると、トイレの壁の穴はふさがっていて、今度は天井の穴からになっている。

 昭和のテレビの深夜帯でバニーガールなどが当たり前のようだった番組のパロディ「早く寝ナイトチョメチョメしちゃうぞ」。小川(阿部)の娘の純子(河合)がハガキの応募に当たって3人組の女子高校生チームとして、セクシー女優チームとニューハーフチームと相撲取りの衣装をまとって相撲をとる。