年収100万円以下もザラ、声優の悲惨なギャラ事情…インボイス制度で廃業増加か

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有志グループ「VOICTION」のHPより

 日本が世界に誇るアニメーション産業の制作現場において、「声優」は必要不可欠かつ重要な存在だ。アニメファンのなかには好みの声優が出演しているだけで作品を観る人も多く、その存在はアニメカルチャー人気の一角を担っているといっても過言ではない。

 そんな声優業界だが、収入事情が厳しいと指摘する声が少なくない。特に2022年に声優の咲野俊介、岡本麻弥、甲斐田裕子が立ち上げた有志グループ「VOICTION」が行った、1万人の声優を対象にしたアンケート調査の結果によると、72%が年収300万円以下だと回答。しかも20代、30代の若年層の約半数が年収100万円以下と回答しており、収入以上にレッスン費などの経費にお金をかけざるを得ない声優もいるそうである。

 しかも、2023年10月から始まるインボイス制度により仕事が激減する可能性もあるとの声も多く、「廃業するかもしれない」と回答した割合は23%にもおよんだ。インボイス制度では、従来の取引で使用されていた「区分記載請求書」に代わり、新たに「適格請求書(インボイス)」が導入されることになる。

 インボイス制度施行前は、課税売上高1000万円以下の事業者、個人事業主は消費税の免税対象になっており、区分記載請求書を発行することで取引先の課税事業者も減税されていた。しかしインボイス制度施行後、免税事業者、個人事業主は適格請求書発行の対象にはならない。そのため、課税事業者が免税事業者、個人事業主と取引した場合、消費税負担は増加してしまう。そして、税負担の増加に悩む課税事業者は、免税事業者、個人事業主との取引を避けるようになる可能性が考えられるのだ。

 アニメカルチャーを支える声優業界だが、その未来は必ずしも明るいものではないのだろうか。そこで今回は長年アニメーション産業、声優業界に携わり、数多くの声優を取材してきたライターの渡辺由美子氏に声優の収入事情について聞いた。

若手は1万~1万5000円、Aランクは4万5000円

 前提として渡辺氏は、声優のギャランティは「ランク制度」によって一律的に決められているのだと語る。

「日本における声優のギャランティは、日本俳優連合に加盟していることを前提に、ランク制度によって定められているんです。この制度では、駆け出し声優であるジュニアランクからCランク、Bランク、Aランクと段階を踏んでいき、キャリアが上がるほどギャランティは増える仕組みになっています。ジュニアランクの基本出演料は1万円~1万5000円で、Aランクになると4万5000円まで上昇。そこから作品の放送時間とテレビや映画などの使用目的によって、さらに金額はアップしていきます。しかもAランクより上にノーランクという段階もありまして、交渉によってギャランティが決まるという声優もいます。

 こうした指定した報酬の額だけは最低でも支払ってほしいと定めたのが現行のランク制度。しかし前述した金額がそのまま声優本人の収入になるわけではなく、そこから所属する事務所の取り分を差し引いて支払われることが多いですね」(渡辺氏)

 このランク制度は先人の声優たちが戦って勝ち取ってきたものだという。

「1970年代以前まで声優という仕事は『顔出しだけでは食べていけない役者さんの副業』という見方もされるなど、地位が高いものではなかった。そのため、ギャランティはかなり不安定になりやすかったんです。そこで、このままではいけないと思った当時の声優たちが組合を作り、70年代以降、待遇改善のためにデモやストライキも含めた運動を行い、91年に日本俳優連合、日本音声製作者連盟、日本芸能マネージメント事業者協会の合意によって現在のランク制度が確立したんです」