失敗を最初から恐れずに動く人が得していること

誰でも怖い「失敗」ですが、予測不能ないまの時代を生き残れるのは「試す」ができる人だといいます(写真:tadamichi/PIXTA)
仕事がたまって終わらない──。日常的にそんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくないだろう。何かいい手はないのか。外資系企業の営業職で、同僚が1日10時間をかけて仕上げる以上の成果を、1日わずか1時間働くだけで上げられる思考法をまとめた『仕事を減らす』から一部抜粋、再構成してお届けする。
 

「組み合わせ」て「試す」の真髄

仕事を減らすためには3つのステップがある。1つ目は何らかの対象から意識的に離れて物事をとらえ、その使命を明らかにする「引いて考える」。2つ目は既存の知識を「組み合わせ」る。3つ目が「試す」だ。

ここでは2つ目と3つ目に紹介した「組み合わせ」「試す」について説明しよう。ただ何かと何かを「組み合わせ」るだけでいいなら誰でもできるはずだ。単語をカードに書き出し裏返してランダムに並べ、そのカードを引けば組み合わせなどいくらでもできる。だとしたら、なぜイノベーションが次々生まれないのかと疑問を抱く人も多いだろう。それは新しい「組み合わせ」には「失敗」のリスクがあるからだ。

大前提として、失敗は成功の過程、創造性の一部と認識できない人が多いのも大きな原因だ。リスクを冒して失敗するのは誰でも怖い。だから変幻自在に新しい組み合わせを「試す」ことが習慣化されにくい。

失敗が怖いから「このままでいい」という強烈な心の呪縛が働いてしまう。

突然戦争が起きたり物価が高騰したりする、急激に変化する予測不能ないまの時代を生き残れるのは「試す」という体験が血肉となり、その先にある創造性を身につけた人材だろう。とくに日本人は失敗を恐れる傾向が強いため「試す」ができる人の希少価値は高い。

これは絶好のチャンスだ。企業のバランスシートに載ることのないノウハウや小さなイノベーションなどの無形資産を生み出せる人材は世界中の企業が欲している。「仕事を減らす」思考の3ステップにおける第3ステップ「試す」の存在は、体験がいかに重要かを示すものだ。

TOEICのスコアは800以上あるのに英語を話すのが苦手、という人がいる。知識があるだけに「ちゃんとした文法で話さなきゃ」「間違ったら恥ずかしい」などという気持ちが働いて、何も話せなくなることがあるそうだ。

逆にスコアが400以下でも平気で海外でビジネスを始める人もいる。つたない英語でも話してみる、間違えてもいいから話してみる。赤ちゃんが言葉を話すようになるプロセスと同じで、英語も会話を「試す」ことで身につく。

子どものころ自転車に乗り始めたときに、いきなり乗れたという人は稀だ。ほとんどの人は失敗を繰り返し、何度も「試す」ことで乗れるようになったことを思い出してほしい。

小さなイノベーションは「組み合わせ」を「試す」ことで生まれる。「試す」プロセスを何度も繰り返すうちに、脳内の点と点を結ぶ「組み合わせ」回路が磨かれる。天才や成功者は、たとえ失敗したとしても何度も「試す」ことで成功体験を得て、新しいことへの情熱や好奇心が育まれていることが多い。

やみくもに「試す」のではない

発明家のトーマス・エジソンは、数千もの失敗を経験し(試す)、電球の発明をした。それを「失敗したのではなく、うまくいかない方法を1万通り見つけただけだ」とまで豪語した。人類史に残る発明王エジソンですら「組み合わせ」を「試す」ことを幾度となく繰り返したのである。

たとえ仕事のやり方を変えて満足な結果が得られなかったとしても自分の仕事が減らないだけで、誰にも迷惑はかからない。低リスクで「試す」ことが可能な領域だ。小さなイノベーションを生み出す創造性は「試す」ほど磨かれる。