「Xの代替」の本命と注目される「Bluesky」の“個性”

動画の共有が当たり前になっている今、Blueskyが動画に非対応という点は少し残念に思う人もいるかもしれません。しかし、テキストをベースに交流したい人や、見たくないものを見せられることに疲れた人にとって、このカスタマイズ性は役立ちそうです。

Blueskyは「分散型SNS」

ここまで利用するうえでの特長を説明してきましたが、Blueskyは設計思想にも大きな特長があります。それは、「分散型SNS」であるということです。Twitterのようにひとつの企業が運営する中央集権型ではなく、独立したサーバーを「プロトコル(通信手段)」でつなげて、それぞれのサーバーで自治できる構造になっています。例えていうと、メールの構造と同様です。メールは、各企業が立てたサーバーで運営され、他のサーバーとメール送受信プロトコルでつながっています。

中央集権型では運営元の方針に従うしかありませんが、分散型では自分のアカウントを好みの運営元に移動できます。

Blueskyが開発したプロトコル「AT Protocol」は、サーバーごとに表示のアルゴリズムも選択できます。自分好みの表示がされないときは、自分に合ったサーバーを選べばいいわけです。

公式ブログによると、2月中に「フェデレーション」の初期バージョンを公開する予定です。フェデレーションとは、同じプロトコルを持つ他のサービスを1つのIDで利用できるシステムのことです。これにより、アルゴリズムに束縛されず、SNSを選択する自由や離れる権利が与えられると記載されています。友達や人間関係をそのまま別のSNSへ移行できるということのようです。

モデレーションについても、今後「ラベル付けサービス」が提供される予定とのことです。公式ブログによると、例えばファクトチェック組織が投稿を「部分的に虚偽」「誤解を招く」、またはその他のカテゴリーとしてマークし、ユーザーがそのラベルを購読できるようになります。災害が多い日本では、期待したい機能です。

はたして、Xの代替となるか、ですが、今の段階では未知数です。カスタマイズ性の高さに関しては、Xのアルゴリズムに不満を持つユーザーたちが好む仕様だと思います。しかし、多数のユーザーが集まる巨大なグループが形成されていることがXの強みであり、その中で意見を激しく交わしたり、バズったりすることを喜びとしているユーザーも多くいます。また、テレビのように、同じコンテンツを見ている楽しさを感じている人もいるでしょう。簡単にフィルタリングされてしまうBlueskyに、物足りなさを感じるかもしれません。まずはユーザー数の獲得がカギとなると思います。

Bluesky以外のSNSは?

一方、他の「X対抗」SNSも、代替先としてはまだ弱いようです。MetaのThreadsは、Instagramアカウントで利用できるハードルの低さでユーザー数を得ましたが、Instagramのインフルエンサーが活躍していることで独自の世界になりつつあります。

実は、Threadsも分散型SNSです。マーク・ザッカーバーグ氏は、Threadsと同じ「ActivityPub」プロトコルを採用している「Mastodon」との相互運用テストを始めると宣言しています。今後、プロトコルの違いがどう影響するのか、こちらもわかりません。

Blueskyの公式サイトには「ソーシャルインターネットにようこそ」と記されている(画像:Blueskyサイトより)

現在のXは、2023年夏に始まった「広告収益分配プログラム」により、「インプレゾンビ」が多数出現しています。インプレゾンビとは、バズった投稿にリプライを付けていくアカウントのことを指します。彼らは広告収益の分配を得るために、インプレッション(表示回数)が多い投稿のおこぼれを狙っているのです。

破綻が進むXにうんざりしているユーザーは私だけではないでしょう。はたしてBlueskyの青い蝶が私たちを自由な世界に導いてくれるのか、今後も注目していきたいと思います。