「なぜか相手に話が伝わらない人」の悪いクセ

インターネットで検索すると、さまざまな情報が出てきます。公共の機関や企業が出している情報を利用するのがおすすめです。

なお、数字と出典をまとめたリストを作っておくと便利です。

数字はイメージできるものに置き換える

「厚み」「高さ」「広さ」など、「実物」で確認できるものを使ってサイズ感を示すことができるものがある一方、「実物」がない場合はどうすればいいでしょうか。

例えば、台風の風速を例にしてみましょう。

「平均風速25メートル/秒の非常に強い風」と聞いて、どれくらいの強さかイメージできますか。「平均風速15メートル/秒の風」と比べて、どれくらい違うのかと言われても、なかなか答えづらいですよね。もしかしたら、これまでの経験やニュースを見て、「風速25メートル/秒ってこういう感じなんだ」程度にわかる人はいるかもしれません。

でも、次のように目安があるとイメージしやすいですよね。

「風速15メートル/秒だと、人は風に向かって歩けない。一部の人は転倒する」

「風速25メートル/秒だと、人は何かにつかまらないと立てない」

雨量でも、「何ミリの雨が降る」と数字だけを伝えられるより、「1日で1カ月分の雨が降るのと同じ」と伝えられたほうが、ピンときませんか。

私の住んでいる三重県には大規模な風力発電所があります。この発電所の出力を伝えるときに「9万5千キロワットです」と数字で示されても、比較対象となる目安がないと、どれほどの規模なのかイメージしにくいですよね。そこで、発電所のパンフレットには「一般家庭約5万5千世帯の電力をまかなえる」と記載されています。「一般家庭」を目安にすることで、規模の大きさが伝わりやすくなっています。

この「目安」となる数字についても、先ほど述べた通り、インターネットなどを使って、公共の機関や企業が出している情報をまとめておくと便利です。算出根拠もあわせて示しておきましょう。

以下に「数字のたとえに使える主な事例」を載せました。参考にしてください。

『賢い人のとにかく伝わる説明100式』P.82より

複雑なことは分解してから、似たようなものに置き換える

難しい専門用語を、ズバリとひと言でわかりやすい言葉にたとえることができないときもあります。そんなときには、専門用語の示す内容を分解して、それぞれを似たようなものに置き換えると、わかりやすくなります

例えば、ソフトコンタクトレンズを例にして考えてみましょう。

ソフトコンタクトレンズを選ぶときの指標の1つに、「酸素透過率」があります。一般的に、「酸素透過率」の高いものを選ぶのがいいと言われています。でも、初めてコンタクトレンズを購入する人にとって、「酸素透過率」は耳慣れない言葉です。なぜ「酸素透過率」が高いほうがいいのか、その理由も想像できないでしょう。

そんなときに、「こちらのコンタクトレンズは酸素透過率が○○で……」などと説明しても、スペックのアピールになるだけで、お客様には理解できません。そこで、コンタクトレンズの販売に携わっていた私の知人は、こんな風に伝え方を工夫していたそうです。

「瞳も呼吸をしています。コンタクトレンズをつけることは、その呼吸している瞳にマスクをするような感じです。それって、息苦しいですよね。でも、酸素をたくさん通すことのできるコンタクトレンズなら、呼吸しやすくなります」

マスクをしたら多少なりとも息苦しさを感じることは、ほとんどの人が知っています。だから、こんな風に説明してもらえたら、イメージしやすいのではないでしょうか。

「酸素透過率」という言葉の背景には、「角膜(黒目の部分を覆っている膜)は酸素を使って新陳代謝をしている」という要素と、「ソフトコンタクトレンズは角膜を覆う」という要素があります。「角膜は酸素を使って新陳代謝をしている」を「呼吸」に置き換え、「ソフトコンタクトレンズは角膜を覆う」を「マスクをする」に置き換えたことで、「酸素透過率」という専門用語がわかりやすい表現になったのです。