「なぜか相手に話が伝わらない人」の悪いクセ

このように、専門的な内容を、構成する「要素」に分解してから、それぞれの要素を身近なものにたとえると、専門用語を知らない人にも伝わる説明になります。

「正しさ」よりも「わかりやすさ」にこだわる

専門用語を噛み砕いて説明しようとして陥るのが、「説明しすぎの罠」 です。わかりやすく説明しようとして、あれもこれもと説明しすぎてしまい、かえってわかりづらくなることがあります。

なぜ説明しすぎてしまうのでしょうか。

『賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

それは、「正しさ」にこだわっているからです。何かにたとえようとしても、「厳密に言うと、正確に表現しているとは言えない」と思ってしまい、どんどん補足説明をしたくなるのです。専門家であればあるほど、「正しさ」にこだわってしまいがちです。

先ほど例に挙げた「ソフトコンタクトレンズの酸素透過率」のたとえも、厳密に言うと正確ではない点があります。でも、話を聞かされている側は、専門家ではありません。詳しい説明を求めてもいないでしょう。

相手にとって大事なのは、「正しさ」よりも「わかりやすさ」です。

そして、説明する側にとって大事なのは、「何が伝わればいいのか」というゴールの設定です。

説明上手な人たちを見ていると、「何が伝わればいいのか」を徹底的に追求し、それ以外の情報は思い切りよく排除しています。専門的な角度から見たら、「少し違うな」と思うことがあっても、相手にとって不要な情報ならば、バッサリと捨てて、伝わってほしいことを目立たせています。まるで「デフォルメの似顔絵」のようです。

「デフォルメの似顔絵」は、その人の顔の特徴を大きく強調していますよね。決して、その人の顔を正確に描いたものではありません。でも、似顔絵を見た人にはちゃんと、「その人だ」と伝わりますよね。

たとえも同じです。「伝えようとしていることの特徴は何か」をよく観察しましょう。そして、それ以外の細かなことは思い切って捨てることで、伝わる説明になるのです。