世界注目「やる気ゼロ」でも“すぐ行動できる”技術

やる気や、根性でしょうか。

動けない羊
なんでも後回しにしていて動けない自分は、本来の自分ではない(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)

それとも、持って生まれた性格でしょうか。

確かに、やる気と根性のボルテージが高く備わっている人は、すぐに動ける傾向があります

幼い頃から「この子は活発で」と親に褒められて育った人なのかもしれません。

そのような人はあれこれ考える前に行動できて、やるべきことを先延ばしにすることもありません。

でも、私たちはこうも思うのです。

やる気があってもなお、やる気に火をつける「着火剤」を、私たちの心は必要としています

着火剤がなければ心の勢いは生まれず、電話一つかけるのだって苦労します。

逆に、心に勢いがあれば、さまざまな理由で行動をためらいがちな私たちを、前へ前へとプッシュしてくれるでしょう。それは、仕事や人生を大きく好転させる力になるに違いありません。

ChatGPT創業者も「勢い」を重要視

モメンタムの効果にいち早く注目したのは、海外のビジネス界でした。

いま世界を席巻している生成AI「ChatGPT」を開発したアメリカの起業家サム・アルトマンも、モメンタムに注目した一人です。

彼は投資家として数百社ものスタートアップ企業を見てきた経験から、彼は世界最高学府の一つであるMIT(マサチューセッツ工科大学)の授業に登壇した際に「スタートアップに最も大切なのは、モメンタムだ」と断言しています。

スタートアップ企業が最も大切にするものは、斬新な事業アイデアでも、投資家から集めた資金でもなく、行動する勢いだ、というのです。

大企業のようにヒト・モノ・カネに恵まれていなくても、失敗するリスクがあってもなお、まず、動いてみる

動き続けるなかで少しずつ成果を得て、学び、力を蓄えながら、道なき道を開拓していく

そんなスタートアップの精神は、モメンタムに由来する。サム・アルトマンは、そう言いたかったのではないでしょうか。

モメンタムとは、人生を切り開く力です。

では、どうしたらモメンタムを上げることができるのでしょうか。

ここでは、一番簡単な方法を紹介します。

「三三七拍子」で呼吸を行う

実は「呼吸」も、モメンタムに影響します。

例えば、クンダリーニヨガに伝わる呼吸法「火の呼吸」はモメンタムを高めるために使えます。

ただし、本格的な火の呼吸は難しいので、ここでは簡易版を紹介します。
背筋を伸ばして、「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」と息を短く、強く吐いてください。

わかりやすく「ハッハッハッ、ハッハッハッ、ハッハッハッハッハッハッハッ」と、三三七拍子にしても結構です。

火の呼吸をすると激しい運動をした後のように心拍数が上がるため、アスリートのトレーニングにも取り入れられています。

達人級になると、呼吸を用いて心拍数を1分あたり200回ぐらいまで上げることができるそうです。

しかし、一般の方は、無理は禁物。

多くても、5~10回にとどめておきましょう。

やりすぎると酸素過多による過呼吸を来す恐れがあります。

特に、心臓の血管系に不安がある方は控えてください。

なぜ、呼吸がモメンタムに影響するのかというと、自律神経が関わっているからです。

火の呼吸は交感神経に作用します。

交感神経とは身体が活動的になるときに優位になる神経のこと。

モメンタムに着火させるための呼吸ともいえます。

「呼吸瞑想」のように、リラックスにつながるものもあります。

心静かにゆっくり呼吸をすると、リラックスしているときに優位になる神経、副交感神経に作用します。

そのため呼吸法を覚えると、気持ちを上げるのも下げるのも、ある程度コントロールできるようになるのです。

呼吸する羊
呼吸を速めるだけで、モメンタムは簡単に上がる(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)