雇用も給与も悲惨な40歳以下は“割に合わない”…恵まれた団塊世代への遺産税課税の提案

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「Getty Images」より

高齢者対象の社会保障制度の現状

 2018年に75歳以上の後期高齢者人口が、65歳以上75歳未満の前期高齢者人口を上回ったが、その後も75歳以上の後期高齢者は増加を続け、55年頃に2400万人台とピークとなる。総人口は現在の1億2600万人から55年には9700万人へ3000万人減少すると予測されている。それ以降は、国民の4人に1人が75歳以上という状態で安定する。

 その一方で、社会保障費受給の比較的少ない65歳以上75歳未満の前期高齢者は減少傾向に転じる。このような人口構造のもとでは、今ですら現役世代が支える高齢者対象の社会保障制度を維持できるわけはないであろう。

 マクロスライドが的確に機能すれば年金支給額は減少するので、年金制度自体は破綻しない。一方、後期高齢者が急増するなかで、医療・介護保険および生活保護制度は財源的に見て大きな問題を抱えている。

後期高齢者医療保障制度

 75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度の財源は、公費が50%、大企業の健保組合からの支援金という名の強制的な冥加金が40%で構成され、後期高齢者による保険料は残りの10%である。平均して、生涯にかかる医療費の半分以上は75歳以上で発生している。公費依存の財源状態で75歳以上の後期高齢者が急増していることを考えれば、すでに保険制度としては破綻しており、現役層の搾取なくして、持続性がないことは明白であろう。一定以上の収入か預金を有する高齢者の自己負担を1割から現役並みの3割にあげたところで焼け石に水であり、単なる政治的なアピールでしかない。

・介護保険制度

 介護保険の財源も50%が公費、高齢者による保険料が25%、40歳以上の現役による保険料が25%となっている。今後、要介護認定率が上昇する後期高齢者が急増するなかで、認定を厳しくするなどの抑制策やごく少数の豊かな後期高齢者の自己負担率を上げるという策を講じたとしても、給付費の増加は避けがたく、20歳以上からも保険料を徴収するとしても、保険料依存には限界がある。公費の比率が高まるばかりであり、保険制度としての自律的機能をもはや喪失している介護保険は、公的扶助の側面が一段と強くなるであろう。

・生活保護の現状

 生活保護を見てみると、生活保護世帯の半数を65歳以上が占めているのが現状である。一般的に高齢者は雇用市場に戻ることは容易ではなく、貧困から抜け出ることは難しいので、高齢者数の増加に伴い生活保護世帯における高齢者比率は増加していくと考えるべきである。こうなると本来のセーフティネットとしての生活保護ではなく、実質貧しい高齢者の年金・医療・介護制度と化し、生活保護への公費投入が拡大の一途をたどる可能性が極めて高い。

 このような後期高齢者医療制度、介護保険制度、生活保護制度が直面する構造的な問題を考えると、その改革は急務である。抜本的な改革を避けて、75歳以上の後期高齢者に対して、医療・介護・生活保護それぞれの制度で対応することは、きわめて非効率的である。むしろ、医療・介護・生活保護を一体化した社会保障サービスを提供するほうが望ましいのではないか。

今後は貧困高齢者が増加

・高齢女性の貧困化

 現在の40~50代の女性では離婚も珍しくなく、一度も結婚しない人も増えた。彼女らが70~80代になる2050年には、高齢者のうち夫がいる人(死別含む)は73%に減り、未婚・離婚が27%に増える。国際医療福祉大学の稲垣誠一教授のシミュレーションによれば、2030年には未婚・離別女性の約4割が生活保護の対象になるほどの貧困に陥る。