世田谷一家殺害、警察内で封印された犯人像と捜査ミス…20年目の遅すぎるDNA型鑑定

フジテレビ番組が契機か

 封印されてきた言葉が再脚光を浴びる契機となったと推察されるのが、12月19日にフジテレビで放送された『未解決事件SP 世田谷一家殺人事件 20年目のスクープ~3つの影を持つ男~』という特番だった。

 同番組では2005年当時、警察の依頼を受けDNA型鑑定を行った水口清・東海大学法医学教室客員教授のインタビューを放映したのだ。水口教授は「ミトコンドリアDNA多型を用いた人種推定」などの論文を書いてきた気鋭の学者であり、前述の「犯人は外国人もしくは混血である可能性が高い」という犯人像の分析結果について警察に報告していた人物である。番組で水口教授は2005年から封印されてきたDNA型鑑定の内容を明かし、詳細な犯人像の絞り込みを行ってみせたのだ。

「番組放映により、警察がDNA型鑑定による捜査に再着手せざる得なくなったというのが、産経新聞スクープの背景にはあるように思います。捜査関係者の間では15年前、せめて10年前にでもDNA型鑑定を中心とした捜査を行いたかったという思いがあると聞きました」(前出・社会部記者)

 最新技術を使えばDNA型鑑定の結果を基に髪色などの大まかな容姿の3D再現まで可能であるという。DNA型鑑定に再着目した捜査本部が、どこまで事件解決に迫れるのかは改めて注目されるところである。

 当局を動かしたという意味では、フジテレビの特番もまた大きなスクープであったといえるだろう。

(文=赤石晋一郎/ジャーナリスト)

●赤石晋一郎/ジャーナリスト

南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。講談社「FRIDAY」、文藝春秋「週刊文春」記者を経て、ジャーナリストとして独立。

日韓関係、人物ルポ、政治・事件など幅広い分野の記事執筆を行う。

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