アサヒビールの屈辱、なぜ11年ぶりにキリンに逆転され首位陥落?スーパードライ時代の終焉

海外企業の大型M&Aを推進

 次期社長になる勝木氏はアサヒビールの子会社、ニッカウヰスキーに入社。2002年に転籍した異色の経歴の持ち主だ。豪州の現地法人のトップを務めるなど「国際派の第一人者」(小路社長)といわれている。「逆境は大好き」と言い切るところが勝木氏の面目躍如たるところか。「不撓不屈でいれば通ずる」がモットーだ。

 小路─勝木のコンビで、16年から17年にかけて西欧や中東欧のビール会社を合計1兆2000億円を投じて買収。20年6月には豪ビール大手カールトン&ユナイテッドブルワリーズを1兆1000億円で手に入れるなど、海外企業の大型M&A(合併・買収)を進めてきた。その結果、20年12月決算で海外売上高は39%(小路氏が社長に就任する以前は15%)に高まった。

 しかし、海外ではどのビール会社もアルコール類のM&Aで成功した例は少ない。勝木氏は「ロンドンなど欧州の主要都市でスーパードライの販路を広げ、2030年までにブランド別の世界販売ベスト10入りを目指す」としている。しかし、「海外展開の見通しは甘い」(世界のビール市場に詳しいアナリスト)といった厳しい見方もある。スーパードライは世界のビールブランドで現在19位にすぎない。

 コロナ後の海外市場はノンアルコールがカギを握るという指摘もある。キリンは乳酸菌飲料の展開を進めている。サントリーホールディングスはお茶と水。「アサヒは何をやるのか。そのあたりが、勝木氏の手腕が問われるところだ。国内はポスト・スーパードライだ」(外資系証券会社の食品担当のアナリスト)。

 勝木氏は3月5日付読売新聞のインタビューに応じ、「国内に55カ所ある営業拠点を4月以降、26カ所に順次集約させる」方針を示した。アサヒGHD傘下のビール、飲料、食品の営業拠点を一体化するという。社長就任早々、改革に挑む勝木氏の手腕が問われる。

(文=編集部)