すき家、利益率は吉野家の約2倍…ゼンショーHDの純利益急増、緻密な経営戦略

「ゼンショーは『世界から飢餓と貧困を撲滅する』という企業理念を掲げていることもあり、積極的に海外進出しています。すでに全店舗の約3割を海外店舗が占めていますが、今期の第一四半期では新規出店113店舗のうち、国内は24店舗だけで、89店舗は海外への出店で、海外志向がより強まっています。こうした戦略は、日本の国内需要が弱いままで、海外のほうが早く消費が戻っている現状と合致しており、今期の好調につながりました。さらに、ゼンショーは原材料の調達から製造・加工、物流、販売まで一貫して自社で管理するMMD(マス・マーチャンダイジング・システム)を構築し、これを海外でも展開していますが、このシステムは同社の大きな武器となっています」(同)

 ゼンショーの好調ぶりの肝にもなった海外展開こそが、今後の飲食業界ではメインストリームになっていく可能性が高いようだ。

「MMDによって海外で製造・加工や物流などを効率的に展開できるなら、日本で売る必要性が薄まってきます。日本はデフレマインドが根強く、回転ずしで110円の皿を120円に値上げするだけでも大変で、すき家が『並盛』の価格を据え置いたことが評価につながるような状況ですから、物価上昇に伴う値上げが当たり前で適正価格で売ることができる海外のほうが魅力的。ゼンショーは6月に北米と英国ですしの持ち帰り店など約3000店舗を展開するスノーフォックス・トップコ(英領ガーンジー)の買収を発表しており、海外展開は加速していくでしょう。ゼンショーに限らず、回転ずしのスシローやくら寿司なども海外進出の姿勢を強めていますし、今後は海外展開をメインにした飲食系企業がより増えていきそうです」(同)

 ゼンショーの最高益の背景には、国内ではデフレマインドに沿ったきめ細かい価格設定で客離れを防ぎ、その一方で成長性のある海外進出を積極的に展開するという戦略があったようだ。

(文=佐藤勇馬、堀部太一/外食・フードデリバリーコンサルタント)