「バカ映画の巨匠」が送るくだらなさ全開の特撮映画 「戦闘シーンは芸人がネタをやってます」

個人的に映画のキャスティングって、無名の若い俳優を起用するよりは、なにかで一芸を確立しているほうが、知名度もキャラもあって華やかになるんですよ。もともと「なんでもあり」から始まったシリーズなので、キャスティングも比較的自由に組めました。ぶっちゃけ役の采配はあまり考えてなくて、誰が出演してくれるかが前提にあって、そこから役のキャラクターや設定を考えているんです。

僕が影響を受けた1950~60年代の映画なんて、基本的に人気のある人を無理やり出すっていうのが主流だったんですよ。『若大将シリーズ』なんてミュージカルでもないのに、いきなり加山雄三が歌い出しますからね。

ーー主演の2人以外にも、プロレスラーの藤波辰爾さんにグレート小鹿さん、お笑い芸人のハリウッドザコシショウさんにチャンス大城さんなど、かなり個性的なキャスティングですよね。

もうおっさんと芸人しか出ていないですよ(笑)。プロレスラーだったら必殺技だったり、芸人だったらギャグだったりと、持ちネタとかキャラクターがないと面白くないですから。暗黙のルールとして、芸人が出演する際には、持ちネタやってもらっています。今作でもチャンス大城やザコシには、戦闘シーンでネタをやってもらってますよ(笑)

そう考えるともはやお笑いネタ対決ですよね。映画で壮大なコントをしているような、宴会芸を楽しんでいるような感覚です(笑)。とにかく小さい頃から特撮とかプロレスが好きで、自分が楽しみたいのが根底にあるので、俺にとって映画はお祭りですね。

ーーキャストの中では、本業が俳優じゃない方も多々いますが、演技指導はされたりするんですか?

演技指導なんかするわけないじゃないですか(笑)。噛まなきゃそれだけで充分と言いたいところですが、俺ふくめ噛んでる人もいるので、まあ演技の面ではお察しですね。今作は撮影期間が3日間でしたが、早く飲み会やりたいんで毎日18時前には完全撤収してましたね。

ーー大学の映画サークルのような緩さですね(笑)

映画を真剣に観にきた人からしたら、「なんだこれ?」って怒られそうですよね。

以前べつの作品で、陣内孝則さんから「観た時間を返してくれ」って言われたこともありましたね。けど、俺からしたらギャグのつもりで作っているから、陣内さんの一言は褒め言葉として捉えています(笑)。あと中村雅俊さんにお会いした時に、「作品面白いですよね」って言ってくださったので、ここぞとばかりに出演オファーしたら、その場で「それは勘弁してください」って(笑)。

ーー良くも悪くもそれだけ反響が大きいということですね。

(ビート)たけしさんからも、「本当にくだらないな」と言われるぐらいですから(笑)。

まあ観る人によって好き嫌いは分かれると思いますが、退屈はしないと思いますよ。入れ替わり立ち替わり一芸に秀でた方々が登場するわけですから。特にプロレスの元ネタがわかる方だったら楽しんでくれるんじゃないですかね。

ーーある意味で映画の既成概念を壊した作品かと思いますが、最後にメッセージがあれば。

『電エース カオス』はシリーズ初の劇場公開作品なので、ぜひ映画館まで足を運んで欲しいですね。劇場だとスクリーンが大きいので、チープな感じとか、馬鹿馬鹿しい雰囲気が、より助長されて感じられると思うんですよ。その不自由さとかあべこべな感じを楽しんでもらえたら。

それで観終わった後に「時間を無駄にした!」と思ってもらいたいですね。それが僕の本望ですから。

(構成=佐藤隼秀)