「基本的にテレビ出ない」令和ロマンの発言の意図

令和ロマン?M-1
令和ロマン(写真:M-1公式サイトより引用)

「漫才熱はないですよ。俺はM-1熱があるだけで。(中略)漫才愛があると、理想とM-1とのズレに苦しんだりすることもあるかもしれない。M-1に寄せ過ぎたくない、とか。でも僕らはスタートからM-1しかないから。迷う余地がないんです」

2024年4月7日に公開されたNumberWebのインタビュー記事「『もう1回M-1出ます!』王者・令和ロマンが語る、なぜ“異例の再出場”宣言をしたか?『芸人を食わせてくれるのはM-1だけですよ』」の中で、令和ロマンの髙比良くるまはこう語った。

昨年の「M-1グランプリ」で優勝したくるまと松井ケムリは、ともに慶応義塾大学のお笑いサークル「お笑い道場O-keis」出身だ。

「大学芸会」、「NOROSHI」といった大学お笑いの大会を沸かせ、「大学生M-1グランプリ2015」で準優勝。満を持して2017年にNSC東京校に入学すると、翌年の「NSC大ライブTOKYO 2018」で首席の座を射止めた。

「漫才熱はない」の言葉の裏にある背景

まさに“お笑いエリート”とも言うべき実績だが、もう1つ見えてくるのは「すでに2010年代中盤に大学生を対象としたお笑いコンテストが充実していた」という背景だ。

お笑い養成所でもなく、プロとしての下積みでもなく、サークル仲間や他大学の知人と切磋琢磨しながら大会に向けて腕を磨く環境があった。

YouTube動画で多くのネタを見られた時代でもあり、東京にはプロ・アマを問わないライブの受け皿もある。

大きな会場でウケる快感、また大会で結果を残せば知名度が上がることも大学時代に知ったことだろう。そして、そんな彼らが目指す先にM-1はあったはずだ。

関西の漫才師のように師匠クラスの芸人との交流が少なかった、東京の若手ならではの率直な思いが「漫才熱はない」という言葉につながったと考えられる。

くるまは、前述のインタビューで「基本的にテレビには出ない」とも語っている。

吉本興業とテレビ局(ABCテレビ)が主催する「M-1」優勝後、関西での活動を希望するコンビはいたが、表立って出演番組を選んでいると発言した芸人はこれまで記憶にない。

必然的に一部のM-1ファンや先輩芸人からけげんな顔を向けられているが、その根底にはどんな思惑があるのだろうか。

まず表層的な理由として挙げられるのが、「テレビはコスパが悪い」と言われる点だ。

松竹芸能から独立し、「ザ・森東」を立ち上げた、さらば青春の光・森田哲矢はさまざまなメディアで「(MCクラスでない限り)テレビはギャラが安い」「稼ぐというより、宣伝の役割が大きい」と語っている。この現状を知れば、テレビの世界でトップを目指そうと考える若手が減少するのは自然なことだ。

テレビよりも自由度が高く、稼げるところへ

コロナ禍によってYouTube動画やライブ配信が盛況し、「テレビよりも自由度が高く、より稼げる」と活動方針をシフトした若手は数多い。

また有観客でのライブが一定期間中止となり、劇場を中心とする活動にリスクが生じることも露呈した。テレビ、SNS、インターネットラジオ、劇場など、あらゆるプラットフォームでファンとつながれる場所を確保しておくことの重要性を痛感した世代でもあるだろう。

逆に言えば、そんな状況こそ現在の若手を象徴している。だからこそ、くるまは時流を感じさせないテレビ番組の出演を控え、新たな流れを生み出そうと模索しているのではないか。

2024年3月16日に公開されたYouTubeチャンネル『NON STYLE石田明のよい~んチャンネル』の動画「【野望】令和ロマンのこれからを熱く語る!/髙比良くるま(令和ロマン)、石田明(NON STYLE)【髙比良くるま#4】」の中で、くるまはこう語っている。