「バカ映画の巨匠」が送るくだらなさ全開の特撮映画 「戦闘シーンは芸人がネタをやってます」

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河崎実監督(撮影=佐藤隼秀)

ギャグ要素満載の特撮ヒーロー映画『電エース カオス』が絶賛公開中だ。「つよ~い、ゆる~い、くだらなさ1億%」というキャッチコピーのもと、歌手のタブレット純、元キックボクシング世界王者の小林さとしらがヒーロー役を演じる。キャスティングも異色だが、一体どんな映画なのか。「日本バカ映画の巨匠」の異名を持つ河崎実監督に話を聞いた。

ーー23年12月22日から公開されている『電エース カオス』は、特撮ヒーロードラマ『電エース』シリーズの最新作だと聞いています。そもそも『電エース』とはどのような作品なのでしょうか?

もともと『電エース』の第一作目が始まったのは1989年。当時、バンダイが刊行していた『電影帝国』というビデオマガジンがあり、そこの編集長からオファーがあったんです。「お金はないけど、なんでもいいから作ってみませんか」と。

二つ返事で承諾したのは良いものの、1本あたりの予算は30万円。さてどうしようか……と考えていたときに、ふと思いついたのが「缶ビールを飲んで気持ちが良くなると、身長2000mに変身する」という設定でした。

なぜ2000mなのかというと、小道具として用意していた東京タワーのフィギュアがあり、その横に立ったら縮尺的に2000mが妥当だったんです。当時はセットを組む余裕もないので、俺が『電エース』として出演して、東京タワーと怪獣のフィギュアを使いながら撮影していたんですよ。最終的に俺が演じる『電エース』が、東京タワーを引っこ抜いて、怪獣と戦うという破茶滅茶な作品が完成しました。

ーーそれから約35年が経ち、『電エース カオス』はシリーズ初の劇場公開となりました。

本当に「なにやっても良いんだな」というところから始まったシリーズが、よく35年近くも続きましたよ。ジャンルは特撮ヒーローモノですが、『電エース』にはアクションなんてないですし、こちとら最初からギャグとして作っていましたから(笑)。

ーー「缶ビールを飲んで気分が良くなる」と、変身する設定も斬新ですね。

変身の設定を考えたのも、家で缶ビールを飲みながらなんです。一般的な戦隊モノのヒーローは、敵に攻め込まれてピンチになった時に変身しますよね。それと真逆で、快楽を感じた時に変身するのは面白いなと。予算もない状況で、ウルトラマンのような作品を撮るにはどうすればいいか、試行錯誤していたらギャグ要素満載の設定に行き着いたんです。

それ以降、温泉に浸かったり、女性に抱きついたり、万馬券を当てたりと、気持ち良いシチュエーションはなんだろうかとあれこれと考えているうちに、気付いたらたくさんの『電エース』が生まれていました。

ーー最新作の『電エース カオス』は、どのような内容なのでしょうか。

『電エース カオス』は、過去作の『電エースキック』と『電エースQ』を編集し直して、そこに新しいパートを付け加えて構成しました。『電エースキック』の主演は元キックボクシング世界王者の小林さとしさんで、『電エースQ』が歌手でありお笑いタレントのタブレット純さんで、今作では2人がW主演を務める形に。ただ、歴代の“電エース兄弟”が共演したら、おっさんが同窓会しているような雰囲気になりました(笑)

ちなみにボクサーと歌手の気持ち良い瞬間を考えた結果、小林さんは5秒間で100回キックしたら変身、タブ純さんは曲をフルコーラスで歌ったら変身する設定になっています。ただ、タブ純さんの曲は1曲4分ぐらいあるんですよね。それまでに敵にやられちゃうだろってツッコミも入るんですけど、まあそこはご愛嬌で(笑)

ーーW主演が両方とも本業俳優でないところが面白いですね。