中国、米国の輸出規制→半導体の国産化・量産に成功…スマホや自動車に搭載

 もともと習体制が半導体産業を強くしようと叫んだのは、半導体製品の輸入超過が激しく、毎年15~20兆円も外貨を出さなければ半導体を買えなかったからだ。半導体の自給自足を行えば、少なくとも外貨の流出は防げた。実は2000年ごろにも同様の理由で中国は半導体振興を呼びかけ、SMICが上海に設立された。しかし、結局鳴かず飛ばずに終わった。15年ごろから再び叫んだが、半導体産業はパッとしなかった。図1の中国製半導体のなかには、サムスンやSKハイニックス、TSMC、インテルなどの中国工場の分も含まれている。中国の地場の半導体メーカーの割合は実に乏しい。そんななかで米国が中国の半導体を過大評価し、中国への輸出規制を強めたため、ようやく自国で開発しなければならないという機運が産業界で高まったのである。

 そして最近の動きを見ると、中国では7nmプロセスの半導体が開発されており、最先端の半導体を製造できるようになったかのように見える。もちろん、ファーウェイのスマホ『Mate 60』に使われるプロセッサは、ハイシリコンが設計し、SMICの7nmプロセスを使って製造されたことは間違いない。ただしチップ上には7nmという寸法はどこにもない。実際の最小寸法はせいぜい15~16nmである。3次元構造を駆使することによって、微細化せずとも、まるで7nmプロセスで微細化したかのように集積されたトランジスタ数を増やすことができる。米国のIC分析会社がハイシリコンのチップを分析した結果、SMICの7nmプロセスで製造したICとほぼ同じ集積度だったことから、そのチップを7nmプロセスと結論付けたのである。

 この7nmプロセスのチップ『Kirin 9000S』で最小寸法15~16nmを加工するために、ArFレーザーリソグラフィによるダブルあるいはトリプルの露光技術を使う。高価なEUVを使わなくても7nmプロセスの製造は可能である。ただし、工程が増える分コストはかさむ」

 中国が半導体の国産化を進めれば、中国企業に半導体製造装置を供給する日本をはじめとする海外のメーカーにとっては大きな打撃となる。

「米国政府が中国への製造装置の輸出規制を強めると、日米の装置メーカーの反発を招く。米国にはアプライドマテリアルズとラムリサーチ、KLAなどの大手製造・検査装置メーカーがある。日本の東京エレクトロンはラムリサーチに次ぐ第4位だが、先端半導体装置の中国向け輸出は規制されているものの、先端ではない製造装置なら今のところ輸出は可能だ。実際、アプライド、ラムリサーチ、オランダのASML、東京エレクの売上高に占める中国向けの比率は、それぞれ44%、48%、46%、43%と極めて高い。ちなみにアプライドの場合、第2位の台湾は14%にすぎない。

 ただ中国では人材が乏しい。中国の学生はすぐインターネット企業などに就職するといわれており、半導体産業にはなかなか行かないと、ある中国の業界人は嘆く。中国の半導体企業は、台湾や韓国、日本から人材を高額で雇い入れている。いつまでその外人部隊の雇用が続くかはわからないが、もし半導体産業に従事したいと思う若者が増えるなら、中国の半導体産業は力をつけるだろうし、先端技術の開発ができるようになる可能性は高くなる」(津田氏)

(文=Business Journal編集部、協力=津田建二/国際技術ジャーナリスト)