海鮮丼が7千円…豊洲・千客万来「インバウンド価格」で日本人客は切り捨てか

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「豊洲 千客万来」の公式Xアカウントより

 明日2月1日、東京・豊洲市場(江東区)に隣接する商業施設「豊洲 千客万来」が当初予定より5年遅れで開業する。29日には報道陣などに内部が公開されたが、海鮮丼1杯が6980円と約7000円、コロッケが800円など価格設定が高めだとして、SNS上では「庶民は無理」「インバウンド価格」「インバウン丼」などと話題を呼んでいる。また、30日付「BUSINESS INSIDER」記事によれば、当初は170のテナントを誘致する予定だったが、開業時点では半数以下の約70店にとどまっているといい、長期的に見た施設の先行きについてもさまざまな見方が出ているようだ。

「千客万来」は、約70の飲食店やショップなどからなる「食楽棟『豊洲場外 江戸前市場』」と、温浴・宿泊施設の「温浴棟『東京豊洲 万葉?楽部』」で構成。食楽棟は地下1階・地上3階で、2階は「江戸時代の活気あふれる市場」を再現した「目利き横丁」と「豊洲目抜き大通り」からなり、「目利き横丁」では水産仲卸企業「水長水産」が厳選した旬の食材を使ったメニューの数々を提供し、客は食べ歩きを楽しむことができる。「豊洲目抜き大通り」には、寿司や天ぷらといったなじみの深い料理の店が軒を連ね、地元・江東区の人気店も出店している。

 3階は豊洲市場の海鮮を使った寿司や海鮮丼を提供。フードコートエリアやインバウンド客などの団体客の利用を想定した飲食店があり、旅行会社エイチ・アイ・エスが運営する「海鮮バイキング いろは」ではマグロの解体ショーも行われる。

 温浴棟は、24時間営業の温浴施設と客室数71室のホテルで構成。源泉から毎日運ばれる箱根・湯河原の湯を使う温泉がウリで、東京湾を一望できる露天風呂や、ウォーターフロントの景色を360度望む展望足湯庭園、513台のリクライナーを設けたリラックスルーム、サウナ、岩盤浴などがある。

「千客万来」が開業に至るまでには紆余曲折があった。当初、同エリアの商業施設の運営者として「すしざんまい」を運営する喜代村と大和ハウス工業が決定していたが、両社が辞退し、東京都が再度募集した結果、16年3月に万葉?楽部に決定。18年8月に一部開業予定とされたが、旧築地市場の豊洲移転の延期や、小池百合子知事が唱えた旧築地市場跡地を「食のテーマパーク」とする構想に万葉?楽部が難色を示したこと、さらにはコロナ禍も影響し、開業が遅れていた。

 流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。

「温浴施設と飲食施設を備えることで相互送客効果の創出が期待できる。食楽棟は市場の賑わいをつくり出しており、食のテーマパークといえる施設となっている」

ビジネス戦略としてはアリ

 そんな「千客万来」だが、前述のとおり食楽棟の価格の高さが話題になっている。上記のほかにも「もなか」が700円、ソフトクリームが1600円といった価格設定もみられる。これを受け、SNS上では

<インバウンド全振り価格>

<こんなとこ外国人しか行かないだろうからこうなる>

<豊洲がニセコ化してる>

<近隣住民どころか,日本人がそもそも行かなくなる>

<麻布台ヒルズでランチするより高い>

といった声が続出している。

 不動産業界関係者はいう。前出・西川氏はいう。

「地元住民や豊洲市場関係者の利用を想定しているゾーンもあるが、基本的にはインバウンド客をメインターゲットに据えている。日本の外食は欧米などと比べて圧倒的に価格が安く、このレベルの価格設定でも十分に集客は可能だろう。外国人客の団体が多くなれば、それが敬遠されて日本人客の足が遠のくかもしれないが、現在でも築地の場外市場は多くの日本人客で賑わっており、日本人はわざわざ豊洲市場まで行く必要がないという背景もあり、施設側としても日本人客の集客にはそれほど力を入れていないのかもしれない」