モンスターエナジーがポケモンもモンストも片っ端から商標登録の異議申し立て

<本件商標が使用された場合,申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力が希釈化するおそれが高い。また,本件商標の使用は,申立人が当該商標について獲得した信用力,顧客吸引力にフリーライドするものであるから,申立人に経済的及び精神的損害を与える。したがって,本件商標は,社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神及び国際信義に反するため,公の秩序を害するおそれがある>

 また、食品メーカー・株式会社ミツハシの加工食品の名称に使用されている「M」の文字について、モンスターエナジー社は、モンスターエナジーのロゴの爪の図柄の「出所識別力を希釈化するおそれがある」として、同じく商標登録に異議を申し立てている。

 エイベックスのレーベル「Far East Monster Records」については以下のように主張している。

<本件商標と引用商標4は「MONSTER」の文字を包含する点で外観が類似し、また、「モンスター」の称呼及び観念を共通にするから、商品出所識別標識として紛らわしい印象を取引者、需要者に与える類似のものである>

<本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている申立人商標の出所識別力を希釈化するものであり、また、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない>

 このほか、異議申し立ての対象となっている商標は、パラマウントピクチユアーズの映画『モンスタートラック』や徳間書店の漫画『モンスター娘のいる日常』、日東薬品工業が設立したグループ企業・Noster株式会社、本間ゴルフのゴルフボール「SPEEDMONSTER」、富士急行のアトラクション「マッスルモンスター」など多岐にわたる。

商標権とは「機能」の意味合いが強い

 こうした一連の申し立てはいずれも特許庁から認められていないが、それでもモンスターエナジー社が申し立てを行い続ける理由はなんなのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「そもそも登録された『商標』に認められる『商標権』とは、商標を使用できる『権利』といった意味合いよりは、その商標が付けられた商品やサービスがどこのメーカーが製造したものであるかを明らかにする『機能』の意味合いが強いと考えられています。

 アニメ『ポケットモンスター』や、ゲーム『モンスターストライク』など『モンスター』が名づけられた商品やサービスが『モンスターエナジーカンパニー』によって提供されているなんて、誰も思わないですよね。したがって、認められようがない(『ポケットモンスター』など、登録された商標が無効となるようなことはない)と考えられます。

 では、なぜこんなことをやっているのか。モンスターエナジーカンパニーが、これから新しい商品やサービスを提供するにあたり『モンスターなんとか』といった商標を付けるのでしょうが、その際、いわゆる“ファミリーネーム”、すなわち『個別商品の大概念』、つまり例えばトヨタ車でいうところの『カローラ』『クラウン』といったような商標として認められやすくするため、手あたり次第に他社が『モンスター』を使用することを排除しようとしているのではないでしょうか」

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)