見て(視覚)、理解し(言語・意味)、行動する(運転操作)。たとえば「雨で視界が悪いから減速する」という判断を、AI自身が内部的に論理化できる。これは、単なるパターン認識型AIから、人間に近い説明可能な判断主体への進化を意味する。
「レベル3・4の自動運転で問われるのは“なぜそう判断したのか”。推論可能なAIは、技術というより“責任を担保する装置”です」(小平氏)
自動運転を巡る覇権争いは、現在「テスラ vs エヌビディア陣営 vs 中国勢」の三極構造にある。なかでも対照的なのが、テスラとエヌビディアの思想の違いだ。
■テスラ:本能と現実主義
・数百万台の実車データを武器にするE2E型学習
・カメラのみのビジョン・オンリー
・垂直統合で利益を独占
■エヌビディア:論理と冗長性
・カメラ+LiDAR+レーダーのセンサー融合
・推論による安全性の説明
・OSSを活用した“連合軍”戦略
エヌビディアは、Apple型のテスラに対し、Android型の業界標準を狙っている。
メルセデス・ベンツがAlpamayoを採用した判断は、極めて現実的だ。自社でAI基盤を内製化するリスクを避け、最強の頭脳を外部から調達する。
その代わりに、同社は、安全性・ラグジュアリー体験・ブランド価値に経営資源を集中させる。
「今後の自動車メーカーは、“AIを作る会社”ではなく“AIをどう使うかの会社”になります」(荻野氏)
報道によれば、エヌビディアは2027年にもウーバーなどと連携し、ロボタクシー事業に本格参入する構想を描いている。10万台規模とも言われる計画が実現すれば、同社は以下3層すべてを握ることになる。
・ハードウェア(AIチップ)
・プラットフォーム(開発基盤)
・サービス(移動そのもの)
自動車産業の競争軸は、エンジンからAIへと完全に移行した。Alpamayoの普及が進めば進むほど、多くのメーカーは“箱”を作る存在になり、インテリジェンスの主導権はエヌビディアに集中する。
100年に一度の変革期。その最終局面を支配しようとしているのは、シリコンバレーの半導体企業だ。公道をハックするのは、もはや自動車メーカーではなく、AIの王者エヌビディアなのかもしれない。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)