店頭金利はメガバンク以下なのに利益3倍…トマト銀行の「払う相手を絞る」預金戦略

 店舗側でも、7〜9月に地元サッカークラブの応援定期を扱い、5年ものに年1.1%を設定した。ただし対象は、30万円以上の「新たな資金」に限られる。

 つまり、全預金者に一律で高い金利を払うのではない。「新規の資金」「ネット経由」「上限額・期間付き」といった条件で区切り、獲得したい資金にだけ厚く払う設計になっている。

「既存の定期まで一律に上げれば、もともと動かないお金にまで高いコストを払うことになる。体力に限りのある第二地銀にとって、どこに、いくら、いつまで払うかの線引きは収益に直結します。全国一律で動くメガバンクに対して、むしろ小回りが利く部分です」(同)

 預金者の側から見ると、注意点もある。こうした特別金利は多くの場合、初回の満期までしか適用されない。応援定期の商品説明にも、2回目以降は満期日の店頭金利になると明記されている。

「キャンペーン金利と店頭金利、そして満期後の金利は分けて考える必要があります。5年ものなら中途解約したときの利率も確認しておきたい。表示された数字の高さだけで預け先を決めると、想定していた利息にならないことがあります」(ファイナンシャルプランナー・成瀬愛氏)

個人預金は前年割れ、受け皿は「投資信託」

 決算資料には、好業績の陰にある課題も表れている。2026年6月末の単体預金残高は1兆2750億円と、前年同期から137億円増えた。ところが内訳を見ると、増えたのは法人預金(185億円増の3549億円)で、個人預金は8951億円と約72億円減っている。

 業界全体でも状況は厳しい。金融庁は、個人預金が減少する地域金融機関が増える傾向にあると指摘している。日本経済新聞によれば、ネット銀行主要6社の預金量は40兆円を突破し、中国地方の地銀すべての合計を上回った。地方から都市部やネットへの資金流出は、構造的な問題になりつつある。

 一方で、同行の投資信託残高は811億円と1年で約200億円(33%)増え、預金・投信・保険などを合わせた預り資産は1兆4883億円に伸びた。個人マネーの一部は、同行の外に出ていったのではなく、同行の窓口を通じて預金から運用商品へ移っている可能性がある。対面で資産運用を相談できる店舗網が、顧客基盤の流出を一定程度食い止めているとみることもできる。

 集めた資金の行き先は、ほぼ地元だ。貸出金のうち岡山県内向けは約87%を占め、住宅ローン残高は3457億円と前年から約4%伸びた。ネットも使って広く資金を集め、地元の企業や家計に貸す。地方銀行本来の機能を、調達手段を広げることで支えている構図といえる。

分かれ道は「払い方」と「使い道」

 日銀は9月18日、政策金利を1.25%程度へ引き上げた。約31年ぶりの水準である。メガバンク3行は同日中に普通預金金利を11月2日から0.5%へ上げると発表し、24日には地銀・第二地銀19行も同様の引き上げを表明した。トマト銀行の今回の改定は6月の利上げへの対応で、9月の利上げ分はまだ反映されていない。預金金利の引き上げ圧力は、今後も続くとみるのが自然だ。

 その中で地方銀行の明暗を分けるのは、金利の高さそのものではないだろう。体力勝負の金利競争になれば、規模とコストで勝るメガバンクやネット銀行に分がある。中小の地域銀行にできるのは、どの資金にどれだけ払うかを見極め、集めた資金を地元での貸出や資産運用の提案にきちんとつなげることだ。

 キャンペーンで集めた資金は、特別金利が切れた後も残るのか。じわじわ上がる預金コストに、貸出金利の見直しはどこまで追いつくのか。トマト銀行の「0.65%」の成否は、今後の決算でこの2点を確かめることで見えてくるはずだ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=成瀬愛/行政書士・ファイナンシャルプランナー)

【主な参照データ・出典】
トマト銀行 2027年3月期第1四半期決算短信
三菱UFJ銀行 円定期預金金利の改定(2026年7月31日)
トマト銀行 ももたろう支店キャンペーン
トマト銀行 応援定期預金
株探 トマト銀行 業績推移
金融庁「地域金融力強化のための金融庁の取組」(2026年6月24日)