メリット、デメリットを把握したことで、危機にしっかりと向き合う準備ができたとしましょう。次のステップでは、危機をレベル分けすることが解決方法になります。
麹町中学校の校長先生をやられていた工藤勇さんが著書の中で、「子どもを叱るとき、問題をレベル分けしておくべきだ」、といったようなことをおっしゃっていました。
学校で先生をしていると、子どもを叱ったり、怒ったりしないといけない場面があります。たとえば、「置き勉」と言われる、勉強道具を机に入れて持って帰らないことを禁じている学校があります。この置き勉は、𠮟るべきレベルとしてはどうでしょうか。おそらく、小さいほうではないでしょうか。その一方で、3階の教室でベランダの手すりに登って歩く、のはどうでしょう。命にかかわる問題であり、絶対に許してはいけないことです。
このとき、置き勉を叱る熱量と、ベランダの手すりに登って歩くのを叱る熱量は、同じであってはならない、というのが工藤先生の主張です。なお、工藤先生の学校では叱り方を数段階に分けて、どのように叱るかを指導しているとのことでした。
こう聞くと、特別なことではなく当たり前のようですが、意外とできていないものです。ささいなことで過剰に叱りつけてしまう一方で、重大なときにはひょうし抜けするほどあっさり済ませてしまう。子どものいる家庭でも、よくあることのように思います。
では改めて、家庭内の危機のとらえ方をレベル分けしてみましょう。「子どもをキャンプに連れていく」を題材に考えてみます。
まず、キャンプすることのメリットとデメリット、キャンプしないことのメリットとデメリットをそれぞれ書き出し、どこを重視すべきかを考えます。家での話し合いなのに書き出すと言うと、「そんな大げさな」「面倒くさい」と思うかもしれませんが、夫婦間で意見が合わないときには、むしろ書き出したほうが、意見もまとまりやすく話が進みます。
そして、書き出されたうち、とりわけデメリットに着目して、それが「置き勉」に当たる程度の軽いものなのか、「ベランダの手すりを歩く」に当たる重大な危機なのか吟味し、レベル分けしていくのです。
キャンプは、川辺や山で行うものです。言うまでもなく、事故や怪我の危険性は、都市以上に高いでしょう。また昨今であれば、クマの危険性も無視できません。加えて危険生物は、クマだけではありません。ヘビ、虫など危険な生き物がたくさんいます。
ただ、こうしてデメリットを書き出していくと、重大な危機をはらんでいように思える一方で、危機を避ける対処法も見えてくるものです。たとえば、安全が保障された都市近郊のキャンプ場であれば、子ども連れでもそれほど問題ないかもしれません。
このように書き出し、話し合いを通して、危機に向き合う落としどころが見つかっていくのです。
④⑤はまとめて紹介します。
あとは、レベル分けした危機を精査して、夫婦間で受け入れられる危機を実行します。先のキャンプの例であれば、父母ともに安心できる、安全なキャンプ場でキャンプなら子どもを連れていってもそれほど心配ない、という感じです。
そうして、心配性を乗り越えて危機を実行することができたのなら、最後は、感謝です。奥さんが、自分に付き合ってこうやって考えてくれているから無事に家族が健康でいられること、大きな問題が起こっていないことに感謝しましょう。「助かっているよ、ありがとう」と言葉にして伝えることです。
ある意味、奥さんの心配を乗り越えて、多少リスクある行動を実践していく方法を解説してきましたが、奥さんの心配を軽視しているわけではありません。むしろ奥さんの心配は、家族の危機を避けてくれる大切なアラートだととらえています。
そのアラートを無視すると、夫婦関係が悪化するだけでなく、本当に事故が起きてしまうこともあります。
「事故が起こる確率なんて低いだろ」、そうタカをくくって、子どもを事故で亡くすという悲劇は、毎日どこかで起こっています。
そうしたことを防げているのは、心配性とも言える親が(多くの場合、男性以上に心配性な奥さんが)、危機に備え、心配し、対策を打っているからこそです。
奥さんの心配を、確率論でねじ伏せたり、妥協して黙り込んだりするのではなく、そのリスクに向き合って、どうしたらリスクが減るか、どうしたらよい状態に迎えるか、お互いに話し合っていく姿勢が重要なのです。
結論としては、繰り返しになりますが、奥さんを上回る危機感を持つようにしてください。
その上で、リスクをレベル分けして、どのリスクなら乗り越えられるかを話し合っていく。そのプロセスは、夫婦をより強固なチームへと変えていってくれるはずです。