東京ヤクルトスワローズ 髙津流マネジメント2025

スワローズ12年間の指導者としての歩み
手塩にかけて育てた選手が一軍で活躍する醍醐味

勝敗を求めつつ、幸せも噛みしめつつ

――残り試合も本当にわずかになりました。改めて、残り試合に対する思い、決意を教えてください。

髙津 みんなには言っていないですけど、あんまりうれしくないカウントダウンが始まっていますよね。一日経過することに、それが「1」減っていく。でも、改めて幸せと楽しさを感じているのも事実です。もちろん、毎日の勝敗には全力を尽くしていますけど、残りわずかとなったユニフォームを着る時間を大切にしながら、毎日を過ごそうと意識しています。

――選手たちには、その思いは伝えていないのですか?

髙津 退任報道が出た直後の京セラドーム大阪で、選手たちをみんな集めたときに、「残り試合は少ないし、みんなと一緒にユニフォームを着てグラウンドに立てる幸せを感じながら、これからの試合を戦いたい」とは伝えました。

――勝利を求めつつ、残りわずかとなった監督生活も楽しみつつ、幸せも噛みしめつつ、その両立を目指すのですね。

髙津 もちろん、試合が始まると、「楽しみながら」とか、「幸せを感じながら」というのは難しいかもしれないですけど、ずっと勝負の世界で生きてきて、勝負の楽しさ、厳しさというのはよく理解しています。真剣に勝利を求めていくということも、僕にとっては楽しさであり、幸せであることは間違いないです。

――神宮球場では、監督に対する声援がひときわ大きく聞こえてきます。それに応えるかのように、最近では試合後にサインボールの投げ入れも行っていますね。

髙津 繰り返しになりますけど、神宮での試合が少なくなってきているので、いろいろなことを噛みしめながら、心にも、そして頭にも、いい思い出を残していきたい。そして、感謝の思いをファンの人にも伝えたい。そんな思いで、毎日を戦っています。まぁ、いろんな思いがよぎっているので、それらを噛みしめながら毎日を過ごしています。その思いが最近では特に強くなりましたね。

――次回連載ではペナントレース終了後の率直な思いを尋ねつつ、改めてこの6年間を振り返りたいと思います。シーズン完走まで、引き続き頑張ってください。

髙津 今はまだシーズン中なのでいろいろやるべきことも多いけど、シーズンが終わればゆっくり振り返ることもできると思います。残り数試合となりましたが、引き続き「声燕」をよろしくお願いします。最後まで頑張ります。

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プロフィール

髙津臣吾
髙津臣吾

1968年広島県生まれ。東京ヤクルトスワローズ監督。広島工業高校卒業後、亜細亜大学に進学。90年ドラフト3位でスワローズに入団。93年ストッパーに転向し、20セーブを挙げチームの日本一に貢献。その後、4度の最優秀救援投手に輝く。2004年シカゴ・ホワイトソックスへ移籍、クローザーを務める。開幕から24試合連続無失点を続け、「ミスターゼロ」のニックネームでファンを熱狂させた。日本プロ野球、メジャーリーグ、韓国プロ野球、台湾プロ野球を経験した初の日本人選手。14年スワローズ一軍投手コーチに就任。15年セ・リーグ優勝。17年に2軍監督に就任、2020年より現職。

著書

明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと

髙津臣吾 /
2021年、20年ぶりの日本一へとチームを導いた東京ヤクルトスワローズ髙津臣吾監...
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