セブン-イレブンとファミマの経営統合はあるのか…伊藤忠の「利益」がカギ

ブランド統一をしないほうがいい理由

 仮にファミマとセブン-イレブンが経営統合もしくは事業提携などをした場合、両社および伊藤忠にとって、メリットとデメリットのどちらのほうが大きいと考えられるのか。

「ファミマとセブン-イレブンがブランド統一をしないほうがいい理由は、コンビニが日本全国でほぼ飽和状態にあるからです。3大コンビニが競い合いながら全国展開をしている状況で、仮にファミマとセブンが同じ店になってしまうと、同じ地域で顧客を取り合う同一ブランド内競争が起きます。ファミマとセブンが近くにあっても、消費者はセブンに行ったりファミマに行ったり、気分次第でそれぞれのお店を使います。ブランドと商品が異なれば『今日はこちら』みたいな購買行動が生まれます。ところが、どちらも同じブランドで同じ商品となれば、どちらか近いほうのお店以外は使う機会がなくなります。そうなると漁夫の利を得るのはローソンです。『ファミリーセブン』に飽きたら、消費者が他に行く場所はローソンしかなくなるからです。

 一方で協業のかたちで投資を共有したほうがいいこともあります。たとえば物流は2025年問題でそもそも人手が不足していますから、両社の配送を一元化するメリットは十分にあります。システム開発も同じです。ですから競争するところは競争しつつ、コストや投資を共通化したほうがいいところだけ事業提携で共通化するというやり方が、経済合理的には一番いいと考えられるのです」

伊藤忠にとっては投資のメリットはとても大きい

 ファミマとセブン-イレブンが経営統合などに至らない場合、伊藤忠としてはセブン&アイHDに出資することによるメリットというのは何なのか。

「ファミマとセブン-イレブンがお互い競争しながら、コンビニ業界が大きくなっていくなかで両社ともに成長し、ローソンとの相対的な競争力が拡大していく展開を目指すのが、伊藤忠にとってはもっとも良いシナリオです。ですから商品や営業展開では競争しつつ、バックエンド関連の投資やコストでは事業提携をして、ローソンに対するコスト優位を拡げていくというのは競争戦略上有利な戦い方です。

 そもそも両社のシナジーを一切目指さない場合でも、伊藤忠は両社の商流の部分を握ることができるので、2つのコンビニで販売される食品全般の川上のビジネスを全部掌握することで投資に対するリターンを得ることができます。今、セブンは経営判断の誤りから国内でのシェアを落とし始めています。そういった場合でも、大株主ですから商社から新たな経営者を送り込むことで経営方針を変える力も持つことができます。2つの大手コンビニを持っていることで、コンビニ業界の覇者になれる確率がこれまでの3分の1から3分の2に増えたのと同じ状態ですから、伊藤忠にとっては投資のメリットはとても大きいのです」

(文=Business Journal編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)