国内の電動二輪車シェアリングサービス市場のパイオニア、Luup(ループ)は25日、利用者による交通違反や事故、危険運転などが相次いでいるとの声が広まっていることを受けて、“沈黙”を破って会見を実施。安全対策の強化案などを発表した。同サービスとしては、ソフトバンク系のHELLO CYCLING、NTTドコモ系のドコモ・バイクシェアなど新規参入の発表が相次ぎ市場が活性化しつつあり、東京都内では走行するループ車両を目にする機会も増えたが、以前から事故や交通違反の多さへの批判も強い。だが、過去には登場当初は社会的に批判を浴びたものの、利便性の高さから対策や法律・ルールの整備が後追いで進められ、数年後には人々にとって当たり前のものとして定着した商品・サービスというのは珍しくない。では、電動二輪車シェアもそのような多くの人にとって“必需品”となる日はくるのか。そして、そのためにはどのような要素が必要となるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
現在は東京・大阪・横浜・京都・神戸・名古屋などにポート拠点約1万2400カ所を設置し、約3万台を運用するループは、基本料金50円(税込)に1分あたり15円の時間料金で利用できる(一部地域を除く)。月額980円のサブスクプラン(ライド料金として30分ごとに200円)や、3時間・12時間乗り放題プランもある。専用アプリをダウンロードして氏名、クレジットカード情報、運転免許証などの登録、交通ルールテストへの合格などが必要で、アプリで近くにあるポートを探して二輪車に乗り、目的地のポートで返却するというシンプルな流れ。電動キックボードと電動アシスト自転車の2タイプがある。
ちなみにループとHELLO CYCLINGは上限時速6kmで歩道を走行できる「特例特定小型原動機付自転車」なのに対し(車道の上限時速は20km)、「特定小型原動機付自転車」であるドコモ・バイクシェアは歩道を走行することはできない。ドコモはより安全性を重視して、歩行者との事故リスクがある歩道走行をあえて不可としたためだ。
前述のとおりループの岡井大輝CEOは25日に会見を行い、安全対策の強化策として、車両に搭載されたGPS受信機を用いた危険行動検知システムを実装すると説明。危険運転を行った利用者に警告や利用停止などのペナルティーを科す。このほか、交通ルールテストの難易度引き上げなども行う。背景には危険運転や交通違反の多さへの根強い批判があるが、ループをはじめとする電動二輪車のシェアリングサービスが将来的に普及して社会に定着し、多くの人が普通に使う状況になるためには、どのような取り組み、要素、ブレイクスルーなどが必要と考えられるか。
経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏はいう。
「電動キックボードについては世界的に危険走行や事故の発生が社会問題になり、先行して普及した国々でその後に禁止の動きが広まったことが知られています。日本ではその状況を把握しながら、超党派の議員たちの後押しがあり道路交通法が改正された経緯があります。
業界最大手であるループが未上場会社で情報公開が少ないことも批判されていますが、一方でなかなか日本では育たないユニコーンを目指せるベンチャーの有望株であることも事実です。日本経済の発展の観点では電動キックボード市場もさまざまな批判を乗り越えて変化発展していくことが期待されます。
その観点で社会全体での取り組みについては、3つのポイントがあると思います。一つは今回、ループの経営陣が記者会見を行ったように、実際にどのような問題が起きているのかを運営企業が誠実に公表したうえで、その対策に企業として取り組む対応です。電動キックボードについてはサービス開始後から禁じられているはずの歩道の高速走行や車道の逆走、信号無視や歩行者妨害が頻繁に報告されています。横断歩道も走行してはいけないのですが、こういったルールはほとんど守られていません。さらに今年1月には高速道路に侵入する事件まで発覚しました。