
●この記事のポイント
・葬儀大手・燦ホールディングスがこころネットを完全子会社化。地域拡大と業界再編を見据え、ライフエンディング事業の信頼性・効率性を高める。
・異業種参入や価格競争が進む葬祭業界。消費者の6割が「葬儀に後悔」と回答する中、透明性と安心感の再構築が急務となっている。
・2031年度の創業100周年へ向け、全国550会館体制と売上高100億円を目指す燦HD。介護・見守り・医療など周辺領域へも展開加速へ。
葬儀専門大手・公益社やタルイを傘下に持つ燦ホールディングス(HD)は、葬祭事業を手掛けるこころネットを株式交換により完全子会社化すると発表し、このほど記者会見を開いた。
こころネット株1株に対して、燦HD株0.9株を割り当てる。12月23日に開催予定のこころネット臨時株主総会で承認されれば、株式交換の効力発生日は2026年2月1日、こころネットは1月29日付で上場廃止となる見込みだ。
燦HDの2025年3月期の連結売上高は319億円。こころネットは東日本で葬儀サービスの提供や墓石、生花の卸売りなどを手掛けており、同年度の連結売上高は101億円だった。
燦HDは福島市を本拠とするこころネットを傘下に加えることで、出店地域の拡大とライフエンディングサービスの拡充、さらに業務効率化を進める考えだ。

●目次
両社の経営統合の背景について、燦HDの播島聰社長は「事業環境の変化」と「信頼に至る企業としての重要性」の2点を挙げた。
エンディング業界は近年、異業種からの新規参入が相次ぎ、競争が激化している。価格競争に加え、M&Aによる業界再編も進行中だ。葬式に対する消費者の意識が変化するなか、全国的には依然として地域密着・家族経営の葬儀社が多く、労働集約型の経営から脱却できていない事業者も少なくない。
燦HDが今年3月に実施した「ライフエンディングに関する意識調査」では、回答者の約6割が「葬儀について後悔していることがある」と回答。その理由の1位は「適正価格」だった。
つまり、消費者は葬儀を選ぶ際の基準を「表示価格」に頼っているものの、それが内容やサービスの質に照らして妥当なのか判断できていないということだ。
播島社長は次のように語った。
「葬儀・エンディングサービス会社に最も求められるのは安心感と信頼感です。今回の経営統合をきっかけに、こうした業界全体の課題にも変化を促していきたいと考えています」
燦HDが経営統合を進める目的の一つに、2031年度に迎えるグループ創業100周年へ向けた「10年ビジョン」の達成がある。
同ビジョンでは、葬儀事業の拡大を柱に掲げ、2032年度までに全国550会館体制の構築を目指している。また、葬儀前後のサポートを含むライフエンディングサポート事業の売上高を100億円に引き上げる計画だ。
この領域には介護や高齢者施設での食事提供、訪問医療マッサージなども含まれる。
統合によるシナジー効果は大きく3つある。
1つ目は、出店地域の相互補完だ。こころネットの4県47会館が燦HDの16都道府県281会館に加わり、合計20都道府県328会館体制となる。両社の事業エリアは重複がなく、補完関係を築ける。
2つ目は、積極的なM&Aによる事業拡大である。地域の拡大によって事業基盤を強化し、両社が培ったサービスノウハウや人材交流により、サービス品質の向上が期待される。