葬儀に後悔する人、驚愕の6割…「葬儀価格の透明性」と「信頼の確立」が業界の課題

 3つ目は、業界再編の中核を担う存在としての位置づけだ。人口減少により労働力確保が難しくなるなかで、IT活用や資材の共同購買などによるコスト削減、生産性向上が経営の最重要課題になるとしている。

【展望】ライフエンディング領域の新たな挑戦

 記者会見後、BUSINESS JOURNAL編集部は播島社長に単独で話を聞いた。

――中期経営戦略のなかで、もっとも重点を置かれているのはどの領域ですか。数値目標も教えてください。

播島社長「葬儀事業の拡大とライフエンディングサポート事業の拡大の2つです。葬儀事業については、この3年間で店舗数を130店舗まで拡大することを目標にしています。ライフエンディングサポート事業では、売上50億円を目指しています」

――経営統合のシナジーとして経営の効率化が挙げられます。葬儀業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)はどのように進んでいますか。

播島社長「まだまだ当社は遅れています。AI活用までは至っておらず、人が行っている作業をシステム化して効率化する段階にあります。M&Aで組織が大きくなってきたことも踏まえ、今後はインフラの整備を進めていく必要があると考えています」

――コールセンター統合や購買の共通化についても話がありました。

播島社長「購買の共通化は進めています。経営統合したきずなHDではすでに取り組みを開始しています。コンタクトセンターはシステム面の課題が多く、すぐの統合は難しいですが、時間をかけて実現を目指します」

――貴社のESG経営への取り組みを教えてください。

播島社長「事業による環境負荷を第三者機関を通じて検証しています。海岸に太陽光パネルを設置して再生可能エネルギーを活用したり、社用車にはハイブリッドカーを採用しています。当社の場合、特に重視しているのはS(社会)の部分です。私たちの事業そのものが社会貢献であると考えており、その理念を事業活動の中で体現しています」

――事業哲学である「まごころ」や「人の最後に寄り添う」という理念をどのように経営に反映していますか。

播島社長「日本では葬祭事業に許認可制度がなく、異業種からも容易に参入できます。アメリカではフューネラルディレクターやエンバーマーと呼ばれる資格職で、人格テストの義務もあります。当社では“人となり”を重視し、研修プログラムの中で当社の歴史や理念、言葉遣い・所作を学ぶよう指導しています。経営理念や行動規範も、それに合わせて定期的に見直し、浸透させています」

――ライフエンディング以外で、新たに注力していく事業領域(介護・保険・相続支援など)はありますか。

播島社長「理念や方針から逸脱するような事業を新たに始めることは考えていません。あくまでライフエンディングに関わる領域に注力します。今年は訪問医療マッサージの会社をM&Aしました。以前から通所型介護事業もフランチャイズで展開しています。過去には大手銀行主導の高齢者見守りコンソーシアムにも参加し、ロボットによる見守りなども検討しました。孤独死などの社会課題が深刻化するなか、そうしたニーズにも柔軟に対応していきたいと考えています」

 今後も燦ホールディングスは、ライフエンディング領域に軸足を置きながら、時代の変化に応じた新たな価値提供を進めていく考えだ。

(文=横山渉/フリージャーナリスト)