1. 新車投入の遅れ
日産の主力『ノート』『セレナ』は依然人気だが、それ以外の量販車種でモデル末期が続き、展示車不足が深刻化した。日本自動車販売協会連合会のデータでも、日産の登録車販売は2024年比で減少傾向にある。
首都圏の日産ディーラー店長は次のように語る。
「お客様が来店されても、提案できる新型車が限られている状況です。EV偏重でリソースが割かれ、足元の販売車種が不足しているという現実があります」
2. 経営の混乱がブランドに影響
日産は2024年に業績見通しを下方修正し、株価も不安定に推移した。企業統治問題、経営陣の対立といった報道が続いたことで、消費者の間には「将来価値(リセールバリュー)への不安」が広がった。
「自動車は耐久消費財であり、ブランドへの信頼性は購入時の重要な判断要素です。その信頼が揺らぐと、販売に長期的な影響が出る。日産はここを立て直す必要があります」(同)
1. 半導体供給停止の影響
ホンダは2024~2025年にかけて、一部の車載半導体を供給する オランダ企業Nexperia(ネクスペリア)の出荷制限の影響を受けた(報道発表ベース)。『ヴェゼル』『シビック』『N-BOX』など主力車種が納期遅延に直面し、販売機会を大きく損失した。
2. BCP(事業継続計画)の甘さ
半導体の調達リスクはコロナ禍以降、業界全体の構造的課題だ。それにもかかわらず、一部品目について調達先の分散が十分でなかった点が指摘されている。
「調達先の集中は『コスト削減の成果』に見える一方で、危機時には脆弱性として露呈します。今回のホンダの影響は、部品戦略の再構築が急務であることを示しました」(同)
3. 国内販売の“偏り”という構造課題
ホンダの国内販売の約4割が『N-BOX』に依存している(2024年販売データ)。同車は絶対的な人気車種だが、裏返せば「普通車ラインナップの弱さ」を示す。
「ホンダはN-BOXの成功で軽市場では存在感が大きい。しかし登録車が弱く、スズキやトヨタのように全方位で戦える体制ではありません」(同)
マツダはラージ商品群で高価格帯へ、三菱自動車はPHEV技術、SUBARUはAWDと安全性で差別化し、シェアを安定維持している。
今後の市場構造はどうなるのか。
●スズキの2位は当面揺るがない
軽自動車比率は2024年に過去最高の45.3%を記録しており(全国軽自動車協会)、この構造変化が続く限りスズキは有利だ。
●日産・ホンダの復権条件
日産:
・経営安定化
・2026年前後の新型車投入がヒットするか
・EV偏重からの“バランス型”商品戦略への転換
ホンダ:
・サプライチェーン正常化
・調達先多様化
・普通車ラインナップの強化
これらの実現が不可欠となる。
2025年のランキング変動は、単なる企業の勝敗ではなく、日本市場の構造変化を象徴している。「高くて性能の良い車」から「維持できる、必要十分な車」へ――。日本の消費行動は確実に変化しつつある。
スズキの躍進はその変化の受け皿となった結果であり、日産・ホンダの失速は、供給網や商品企画の遅れが浮き彫りとなった形だ。
かつての“ブランド力”だけで車が売れる時代は、すでに終わりを迎えている。いま求められているのは、変化した市場構造を前提とした新たな経営戦略である。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)