「婚約破棄してくれてありがとう」って言ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

 アラン王太子の訪問から三日後。私の屋敷には、まるで王都中が興味津々とでも言わんばかりに、招かれざる客がひっきりなしに現れていた。

「ごきげんよう、レティシア様。少しだけお時間を――」

「申し訳ありません、ただいまお嬢様は“療養中”ですので」

 メルの冷ややかな切り返しに、来客の顔が強ばるのを窓越しに見て、私はくすりと笑った。

(ふふ、いい気味)

 婚約破棄された女に、ここまで関心を寄せるなんて皮肉な話だけど――貴族社会なんてそんなもの。誰かが落ちれば、その跡地を漁ろうと群がる。
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