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一
父親の思い
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「なんだと!? それは本当か?!」
「はい、全て事実であります」
「なんということだ·········」
伝達魔法で報告を受けたアグレスタ公爵は頭を抱えた。自身の息子であるレインが婚約破棄された。それも皇太子から一方的に、冤罪を掛けられて。
「クソっ······あのクズがッ、やりおったなッ!」
アグレスタ公爵は執務室の机を思い切り叩いた。その怒りのままに。机がバキバキと音を立て崩れ落ちる。手から赤い液体が零れ落ちているが、気にする余裕など無かった。
──あのクズ皇太子がッ! レインの今までの努力をなんだと思っているのだッ! 13年間も皇太子の為にと頑張って来たのだぞ!
この国、ヴィラルド帝国には主に3つの貴族派閥がある。
アルスター公爵家を筆頭とした、皇族に忠誠を誓い、皇帝は絶対権力者だと考える皇族派。
バレンシア公爵家を筆頭とした、貴族にもある程度権限を与え、地方の貴族にも権力を与えるべきだと考える貴族派。
アグレスタ公爵家を筆頭とした、現状維持または情勢に応じて最善の選択を取ろうと考える中立派。
皇太子との婚約が決まったのはレインが5歳の時。次期公爵になるレインを取り込むために、中立派を皇族派に引き込む為にと画策した皇帝によるものだった。
アグレスタ公爵はもちろん反対したのだが、当の本人であるレインは喜んだ。普段表情を変えない我が息子がだ。皇太子も乗り気のように見えたから許可をした。レインが幸せならそれで良いと思っていた。
婚約が決まったレインは大人でも驚く程努力をした。皇太子を守るためにと剣術を習い。勉強を教えられるようにと寝る間も惜しんで知識を吸収し。お腹を空かせないようにと料理を習い。貴族には必須の攻撃魔法を疎かにし、防御に特化した魔法を集中的に覚えた。皇太子を守る為に魔物と戦い左眼を失明した。レインの今までの人生は皇太子の為だけにあったと言っても良いほどだった。
本当は自分のために生きて欲しかった。だが、レインが幸せそうだったから目を瞑って来たのだ。まさかレインがこんな仕打ちを受けるとは思っていなかった。
「あのクソ皇帝ッ! クズ皇太子ッ! 根絶やしにしてくれるッ!」
最早アグレスタ公爵は反皇族派と言っても過言では無い程に怒っていた。今目の前に皇太子が現れれば迷わず殺しているだろう。
怒りで震え理性を失っていたその時、執務室の扉がノックされた。
「父上、少しお話があります」
その聞き慣れた声に、アグレスタ公爵は理性を取り戻した。婚約破棄をされたばかりの自身の息子が帰ってきたのだ。
アグレスタ公爵は大きく深呼吸をし、ゆっくり扉を開けた。
「ッ!?」
「皇太子殿下に婚約破棄されました。申し訳ありません」
そこに居たのは謝罪をし、頭を下げるレインだった。少し鼻声なのは泣いたからだろう。どんな怪我を負っても平然としていたレインが泣いた。その事実に再び怒りが湧いてくる。
「お前が気にすることは無い。非はあちらにある」
「ですが──」
「レイン。お前は少し休むべきだ。私はお前を責めたりしない。明日からは自由に過ごしなさい」
アグレスタ公爵はそう微笑んでレインの頭を撫でた。今までは学校がある為忙しかったが卒業した今は違う。公爵位を継ぐ準備などはまだ後で問題無いだろう。それに──
──レインに公爵位を継がせる前にクズ二人を引きずり下ろさなければ。
自身に婚約破棄した相手に将来仕えるなど残酷過ぎる。何としてもユーリスが皇帝になるのを阻止しなければなるまい。
「ッ······あ、ありがとうございます」
レインは頭を撫でられたのが恥ずかしかったのか、早足で去っていった。
アグレスタ公爵は撫でた手を見つめながら、皇太子と皇帝への復讐を誓った。
「はい、全て事実であります」
「なんということだ·········」
伝達魔法で報告を受けたアグレスタ公爵は頭を抱えた。自身の息子であるレインが婚約破棄された。それも皇太子から一方的に、冤罪を掛けられて。
「クソっ······あのクズがッ、やりおったなッ!」
アグレスタ公爵は執務室の机を思い切り叩いた。その怒りのままに。机がバキバキと音を立て崩れ落ちる。手から赤い液体が零れ落ちているが、気にする余裕など無かった。
──あのクズ皇太子がッ! レインの今までの努力をなんだと思っているのだッ! 13年間も皇太子の為にと頑張って来たのだぞ!
この国、ヴィラルド帝国には主に3つの貴族派閥がある。
アルスター公爵家を筆頭とした、皇族に忠誠を誓い、皇帝は絶対権力者だと考える皇族派。
バレンシア公爵家を筆頭とした、貴族にもある程度権限を与え、地方の貴族にも権力を与えるべきだと考える貴族派。
アグレスタ公爵家を筆頭とした、現状維持または情勢に応じて最善の選択を取ろうと考える中立派。
皇太子との婚約が決まったのはレインが5歳の時。次期公爵になるレインを取り込むために、中立派を皇族派に引き込む為にと画策した皇帝によるものだった。
アグレスタ公爵はもちろん反対したのだが、当の本人であるレインは喜んだ。普段表情を変えない我が息子がだ。皇太子も乗り気のように見えたから許可をした。レインが幸せならそれで良いと思っていた。
婚約が決まったレインは大人でも驚く程努力をした。皇太子を守るためにと剣術を習い。勉強を教えられるようにと寝る間も惜しんで知識を吸収し。お腹を空かせないようにと料理を習い。貴族には必須の攻撃魔法を疎かにし、防御に特化した魔法を集中的に覚えた。皇太子を守る為に魔物と戦い左眼を失明した。レインの今までの人生は皇太子の為だけにあったと言っても良いほどだった。
本当は自分のために生きて欲しかった。だが、レインが幸せそうだったから目を瞑って来たのだ。まさかレインがこんな仕打ちを受けるとは思っていなかった。
「あのクソ皇帝ッ! クズ皇太子ッ! 根絶やしにしてくれるッ!」
最早アグレスタ公爵は反皇族派と言っても過言では無い程に怒っていた。今目の前に皇太子が現れれば迷わず殺しているだろう。
怒りで震え理性を失っていたその時、執務室の扉がノックされた。
「父上、少しお話があります」
その聞き慣れた声に、アグレスタ公爵は理性を取り戻した。婚約破棄をされたばかりの自身の息子が帰ってきたのだ。
アグレスタ公爵は大きく深呼吸をし、ゆっくり扉を開けた。
「ッ!?」
「皇太子殿下に婚約破棄されました。申し訳ありません」
そこに居たのは謝罪をし、頭を下げるレインだった。少し鼻声なのは泣いたからだろう。どんな怪我を負っても平然としていたレインが泣いた。その事実に再び怒りが湧いてくる。
「お前が気にすることは無い。非はあちらにある」
「ですが──」
「レイン。お前は少し休むべきだ。私はお前を責めたりしない。明日からは自由に過ごしなさい」
アグレスタ公爵はそう微笑んでレインの頭を撫でた。今までは学校がある為忙しかったが卒業した今は違う。公爵位を継ぐ準備などはまだ後で問題無いだろう。それに──
──レインに公爵位を継がせる前にクズ二人を引きずり下ろさなければ。
自身に婚約破棄した相手に将来仕えるなど残酷過ぎる。何としてもユーリスが皇帝になるのを阻止しなければなるまい。
「ッ······あ、ありがとうございます」
レインは頭を撫でられたのが恥ずかしかったのか、早足で去っていった。
アグレスタ公爵は撫でた手を見つめながら、皇太子と皇帝への復讐を誓った。
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