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「どうしてって……」
声を張り上げようとして、遥の淀んだ瞳に声をなくした。
「ずっと叶が好きだったの。叶以外どうだって良かった。言い寄ってくる男たちも、叶に比べれば道に転がっている小石と大差なかったわ」
「小石って、そんな」
こちらを見つめる瞳にうまく考えがまとまらない。
「叶がいれば何もいらない。地位も名誉も全て捨てて添い遂げたっていい。それほどまでに、愛しているの」
恐らくは愛の告白なのだろう。多くの不安を抱きながらも、想いが伝わるようにと願った詩。
千夏との恋を終わらせた今なら、違う受け取り方ができたのかもしれない。だけどそんなことはなかった。
耳の奥に届くことはあってもそこから先へは進まない。心に触れることは決してない。遥と恋人になるなど、想像すらできなかった。
「愛しているのなら、どうしてそんな素振りを見せなかったの? ちゃんと口で言ってくれなきゃわかんないよ」
脳を拒否する方へ切り替え、遥の揚げ足を取った。
「怖かったのよ」
遥が体を起こした。
「もしも告白が失敗して、話せないほど気まずくなったら死んだ方がいい。だから告白するチャンスをずっと待っていたわ。初めて会った頃から、ずっと」
私を見つめる遥の口元が綻んだ。
「それがやっと来てくれたのよ。汚いけど、ちーちゃんに傷付けられた今なら、私を頼ってくれると思ったから告白したの」
弱った心の隙間に入り、愛の矢印を向けさせる。そこまでして私が欲しかったんだ。
何ごとも完璧で高嶺の花である遥が、何もない私に恋をしてくれた。それは素直に嬉しい。価値を見出せないでいた私の人生に、明かりを灯してくれたといっても過言ではない。
しかし、それでも受け入れるわけにはいかなかった。
「ずるいと思われてもいい。卑しいと思われたっていい。でもね、一つだけわかってほしいの。この気持ちにうそはない。心の底から叶を愛しているのよ」
遥の唇が真一文字に結ばれた。頬を滑る涙を拭わず、呼吸を乱しながらこちらを見下ろしている。答えは初めから決まっている。それなのに、口にしてはいけない雰囲気にのまれた。
そうしてどのくらいたっただろう。遥のしゃっくりが治まった頃、またも遥に先を越された。突然パジャマを脱ぎだすという突飛な行動によって。
「な、何してるのっ」
目に映った遥の下着姿から顔を背けた。だけど見たくないものほど脳裏に残り易い。陶器のような肌と燃えるように赤い下着、鼻息荒くした表情まで鮮明に焼き付いている。
「よそ見をしないで」
顔を強引に戻された。しかし目は決して開けない。まぶたも無理やり開けられる恐怖はあったものの、遥はそれ以上触れてこなかった。その代わりに聞こえた衣擦れの音。一瞬だけ思案した後ですぐに理解が追い付いた。
「全部、脱いだわ」
耳元に落ちた甘い誘惑。再びこちらに覆い被さった遥をどかそうと腰に手を回したものの、遥の喘ぎ声に手を離してしまった。
「せっかちさん。捕まえなくても逃げないのに」
「そうじゃなくてっ。いいから離れて、お願い」
「嫌」
遥の吐息が耳に触れた。
声を張り上げようとして、遥の淀んだ瞳に声をなくした。
「ずっと叶が好きだったの。叶以外どうだって良かった。言い寄ってくる男たちも、叶に比べれば道に転がっている小石と大差なかったわ」
「小石って、そんな」
こちらを見つめる瞳にうまく考えがまとまらない。
「叶がいれば何もいらない。地位も名誉も全て捨てて添い遂げたっていい。それほどまでに、愛しているの」
恐らくは愛の告白なのだろう。多くの不安を抱きながらも、想いが伝わるようにと願った詩。
千夏との恋を終わらせた今なら、違う受け取り方ができたのかもしれない。だけどそんなことはなかった。
耳の奥に届くことはあってもそこから先へは進まない。心に触れることは決してない。遥と恋人になるなど、想像すらできなかった。
「愛しているのなら、どうしてそんな素振りを見せなかったの? ちゃんと口で言ってくれなきゃわかんないよ」
脳を拒否する方へ切り替え、遥の揚げ足を取った。
「怖かったのよ」
遥が体を起こした。
「もしも告白が失敗して、話せないほど気まずくなったら死んだ方がいい。だから告白するチャンスをずっと待っていたわ。初めて会った頃から、ずっと」
私を見つめる遥の口元が綻んだ。
「それがやっと来てくれたのよ。汚いけど、ちーちゃんに傷付けられた今なら、私を頼ってくれると思ったから告白したの」
弱った心の隙間に入り、愛の矢印を向けさせる。そこまでして私が欲しかったんだ。
何ごとも完璧で高嶺の花である遥が、何もない私に恋をしてくれた。それは素直に嬉しい。価値を見出せないでいた私の人生に、明かりを灯してくれたといっても過言ではない。
しかし、それでも受け入れるわけにはいかなかった。
「ずるいと思われてもいい。卑しいと思われたっていい。でもね、一つだけわかってほしいの。この気持ちにうそはない。心の底から叶を愛しているのよ」
遥の唇が真一文字に結ばれた。頬を滑る涙を拭わず、呼吸を乱しながらこちらを見下ろしている。答えは初めから決まっている。それなのに、口にしてはいけない雰囲気にのまれた。
そうしてどのくらいたっただろう。遥のしゃっくりが治まった頃、またも遥に先を越された。突然パジャマを脱ぎだすという突飛な行動によって。
「な、何してるのっ」
目に映った遥の下着姿から顔を背けた。だけど見たくないものほど脳裏に残り易い。陶器のような肌と燃えるように赤い下着、鼻息荒くした表情まで鮮明に焼き付いている。
「よそ見をしないで」
顔を強引に戻された。しかし目は決して開けない。まぶたも無理やり開けられる恐怖はあったものの、遥はそれ以上触れてこなかった。その代わりに聞こえた衣擦れの音。一瞬だけ思案した後ですぐに理解が追い付いた。
「全部、脱いだわ」
耳元に落ちた甘い誘惑。再びこちらに覆い被さった遥をどかそうと腰に手を回したものの、遥の喘ぎ声に手を離してしまった。
「せっかちさん。捕まえなくても逃げないのに」
「そうじゃなくてっ。いいから離れて、お願い」
「嫌」
遥の吐息が耳に触れた。
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