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「百五十グラムですね。少々お待ちください」
屈んでショーケースから肩ロースを取り出す。後はもう慣れたもので、言われたグラム数を計ってお会計。最初は肉の違いがわからず手こずっていたけれど、一年もあればどうにかなった。
「叶ちゃん。そろそろ休憩取ったら?」
千夏のお母さんに声を掛けられ、レジ横の時計を見ると三時を過ぎていた。
「まだ大丈夫ですよ。お母さんこそ、朝から立ちっぱなしじゃないですか」
「あたしは慣れてるもの。それに無理したら体に障るわ」
「もう完治しましたよ。一年も前の話ですし」
「いいからいいから。千夏も休憩に行ってるから一緒に休んでおいで。戻ってきたら今度はあたしが休むから」
半ば無理やりに背中を押された。これ以上反論するものじゃない。調理場でブロック肉と格闘する千夏のお父さんに一声掛け、店の外側にある階段へ向かった。
「叶さん。お疲れ様です」
手すりに手を掛けたところで、上から声が降ってきた。
「おかえりともちゃん。この後バイト?」
「はい。叶さんもお時間あったらぜひ来てくださいね」
「もちろん。今度千夏も連れて行くから、サービスしてね」
道を空け、手を振りながら去るともちゃんを見送った。あの若さで家計のためにバイトか。中華屋にいるらしいし、今度の休みに千夏と行ってみよう。
軋む階段を上り玄関を抜けた。スニーカーを脱いで上がれば、奥の部屋が開けっ放しになっている。嫌な予感を抱えながら部屋を覗く。やっぱり。千夏が寝転んでスマホをいじっていた。
「ドアぐらい閉めて休みなよ。下で休んでるパートさんに、またあれこれ言われるよ?」
「休憩中にそんなこと言わないでよ。ほら、叶ちゃんも一緒に休もう。ね?」
千夏が起き上がって、一人分のスペースを空けてくれた。肩に掛かるほど伸びた髪が踊る。
「またふりかけご飯だけ?」
立ったまま、ちゃぶ台上の空になった茶碗へ目を向けた。
「うん。すき焼き風ふりかけなんだって。台所にあるけど叶ちゃんも食べる?」
「私はいいや。お昼にちょっとだけつまんだし。そういえば千夏、明日はどうするの?」
ちゃぶ台の横に腰掛けて天井を見上げた。少し気まずい話題をする時はいつもこれ。千夏もそれに気付いたのか、返事がいつもより遅かった。
屈んでショーケースから肩ロースを取り出す。後はもう慣れたもので、言われたグラム数を計ってお会計。最初は肉の違いがわからず手こずっていたけれど、一年もあればどうにかなった。
「叶ちゃん。そろそろ休憩取ったら?」
千夏のお母さんに声を掛けられ、レジ横の時計を見ると三時を過ぎていた。
「まだ大丈夫ですよ。お母さんこそ、朝から立ちっぱなしじゃないですか」
「あたしは慣れてるもの。それに無理したら体に障るわ」
「もう完治しましたよ。一年も前の話ですし」
「いいからいいから。千夏も休憩に行ってるから一緒に休んでおいで。戻ってきたら今度はあたしが休むから」
半ば無理やりに背中を押された。これ以上反論するものじゃない。調理場でブロック肉と格闘する千夏のお父さんに一声掛け、店の外側にある階段へ向かった。
「叶さん。お疲れ様です」
手すりに手を掛けたところで、上から声が降ってきた。
「おかえりともちゃん。この後バイト?」
「はい。叶さんもお時間あったらぜひ来てくださいね」
「もちろん。今度千夏も連れて行くから、サービスしてね」
道を空け、手を振りながら去るともちゃんを見送った。あの若さで家計のためにバイトか。中華屋にいるらしいし、今度の休みに千夏と行ってみよう。
軋む階段を上り玄関を抜けた。スニーカーを脱いで上がれば、奥の部屋が開けっ放しになっている。嫌な予感を抱えながら部屋を覗く。やっぱり。千夏が寝転んでスマホをいじっていた。
「ドアぐらい閉めて休みなよ。下で休んでるパートさんに、またあれこれ言われるよ?」
「休憩中にそんなこと言わないでよ。ほら、叶ちゃんも一緒に休もう。ね?」
千夏が起き上がって、一人分のスペースを空けてくれた。肩に掛かるほど伸びた髪が踊る。
「またふりかけご飯だけ?」
立ったまま、ちゃぶ台上の空になった茶碗へ目を向けた。
「うん。すき焼き風ふりかけなんだって。台所にあるけど叶ちゃんも食べる?」
「私はいいや。お昼にちょっとだけつまんだし。そういえば千夏、明日はどうするの?」
ちゃぶ台の横に腰掛けて天井を見上げた。少し気まずい話題をする時はいつもこれ。千夏もそれに気付いたのか、返事がいつもより遅かった。
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