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情けは禁物
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「200万もの大金をそんな簡単に返せる訳が」
「なら、冒険者稼業は引退なさい。200万サートゥルは冒険者稼業をしない限りは、ある時払いの催促無しよ。あなた達姉妹は安全な仕事に就いて、借金は返さなくても文句は言われない。悪い話じゃないでしょ!」
そんな絶望的な表情をしないで。出来る限りの譲歩はしたつもりなのよ。
「でも私たち他の仕事に就くにしても、そこまで食いつなぐお金が有りません」
「もっと言えば、ここから町に行けるだけのお金も有りません!」
姉妹揃って金欠を堂々と言われても困るわ。
これ以上は彼女たちにお金を貸す義理は無いと思うのよ。はぁ、一体どうすれば良いのかしら?
「それに第一、冒険者を辞められないんです!」
「ここで働かせて下さい!」
この流れだとそうなる気がしていたわ。必死な形相で訴えて来たわね、姉妹揃って。
「生憎ですが、人手は足りています。違う方法でのご返済をお考え下さい」
冷たい視線のままナンシーが淡々と言ったわ。情を掛けてはいけないって事ね。
これだけだとナンシーが只の冷たい人みたいだからフォローしなきゃ。
「ごめんなさいね。ここで働きながら休みの時に魔の大樹海やダンジョンに行く冒険者が複数人居てね、人手は足りてるのよ。そういう訳で悪く思わないでね」
うーん、これは嘘じゃないから仕方ないわ。清掃や建物の修繕はその手の人間に任せているの。
ボイラーなんて炎系の魔法を使っているし、厨房で使う氷も同様なのよね。
言っちゃ悪いけど、何の取り柄も無い人間を雇える余裕は無いのが現状ね。
◯▲△
「若女将、ちょっといいですか?」
噂をすれば、丁度その手の冒険者兼当館従業員のボブソンが声を掛けて来た。
剣よりも魔法、しかも補助魔法が得意な細身の男性冒険者はホーナーと組んでいる。ホーナーにとってボブソンの補助魔法が有れば、鬼に金棒みたい。
「どうかしたの?」
「実は無銭宿泊を企てた不届き者がおりました。如何なさいます?」
「えっ? 昨晩は皆様が無料よ。お金を支払って頂く必要は無いわ」
「いえ、それでフロントを素通りしてチェックアウトをしようとした4人組がいましたが、彼等は連泊なんですよ。4日も」
「つまり、昨夜の料金が無料になったどさくさに紛れて、3日間分を踏み倒そうとしたの?」
「はい。ホーナーが捕まえていますが、どうします?」
「そうですね。若女将のご厚意を利用しての無銭宿泊。とてもじゃありませんが許せません」
ナンシーの眼がヤバい事になっている!
間違ってもこの状態で剣を握らせてはダメね。
「そうよね」
無銭宿泊はこれまでにも無い事はなかった。でも把握している限りでは漏れ無く捕えている。
そういう時には1人1日、1万サートゥル相当の労働をしてもらうか、村の自警団に付き出されるのかを選ばせるけど、殆んど全員が前者を選ぶわね。後者の場合、冒険者登録を取り消される事もあり得るから。
仕事は色々。ウチの周りの草むしりとか、道の整備とか、山菜を採って来る等の身体を使う仕事をしてもらっている。
「ダンジョンで入手したアイテムを売れば金になる様な事を言っていますけど」
「そりゃ幾らかにはなるかもだけど、ダンジョンで取れた物には眉唾物も有るしね」
って言うか、どちらかと言えば立派に見えてもゴミ同然の物の方が多い。
「そんなアイテムを鑑定して換金出来るなんて、大きな町のギルドじゃなきゃ無理よね?」
「はい。鑑定には経験を積んで身に付ける特殊スキルが必要ですから。私達では無理ですね」
ナンシーもうやっぱりそんなスキルは持ってない。ボブソンもホーナーも他のスタッフだって無理だろう。
いつも通り働いてもらおうにも目の前に居る姉妹に人手は足りていると言った手前、働かせる訳にもいかない。
どうした物か。私とナンシー、ボブソンで暫し考え込む。
「あの私、鑑定できます!」
この場の沈黙を破ったのはシンシアだった。
「えっ、そんな、鑑定が出来るの?」
嘘をついている様には見えないけど、本当なの?
「鑑定が出来る」なんて言うには鑑定の経験が10年必要だと聞いているのに。
「私たち姉妹は鑑定出来ます!」
今度は妹のケイトの方が自身に満ちた表情で声高に言い放った。
「私たち、質屋の娘だったんです」
質屋の娘だったのね、2人は。でも、「だった」って、過去形?
「なら、冒険者稼業は引退なさい。200万サートゥルは冒険者稼業をしない限りは、ある時払いの催促無しよ。あなた達姉妹は安全な仕事に就いて、借金は返さなくても文句は言われない。悪い話じゃないでしょ!」
そんな絶望的な表情をしないで。出来る限りの譲歩はしたつもりなのよ。
「でも私たち他の仕事に就くにしても、そこまで食いつなぐお金が有りません」
「もっと言えば、ここから町に行けるだけのお金も有りません!」
姉妹揃って金欠を堂々と言われても困るわ。
これ以上は彼女たちにお金を貸す義理は無いと思うのよ。はぁ、一体どうすれば良いのかしら?
「それに第一、冒険者を辞められないんです!」
「ここで働かせて下さい!」
この流れだとそうなる気がしていたわ。必死な形相で訴えて来たわね、姉妹揃って。
「生憎ですが、人手は足りています。違う方法でのご返済をお考え下さい」
冷たい視線のままナンシーが淡々と言ったわ。情を掛けてはいけないって事ね。
これだけだとナンシーが只の冷たい人みたいだからフォローしなきゃ。
「ごめんなさいね。ここで働きながら休みの時に魔の大樹海やダンジョンに行く冒険者が複数人居てね、人手は足りてるのよ。そういう訳で悪く思わないでね」
うーん、これは嘘じゃないから仕方ないわ。清掃や建物の修繕はその手の人間に任せているの。
ボイラーなんて炎系の魔法を使っているし、厨房で使う氷も同様なのよね。
言っちゃ悪いけど、何の取り柄も無い人間を雇える余裕は無いのが現状ね。
◯▲△
「若女将、ちょっといいですか?」
噂をすれば、丁度その手の冒険者兼当館従業員のボブソンが声を掛けて来た。
剣よりも魔法、しかも補助魔法が得意な細身の男性冒険者はホーナーと組んでいる。ホーナーにとってボブソンの補助魔法が有れば、鬼に金棒みたい。
「どうかしたの?」
「実は無銭宿泊を企てた不届き者がおりました。如何なさいます?」
「えっ? 昨晩は皆様が無料よ。お金を支払って頂く必要は無いわ」
「いえ、それでフロントを素通りしてチェックアウトをしようとした4人組がいましたが、彼等は連泊なんですよ。4日も」
「つまり、昨夜の料金が無料になったどさくさに紛れて、3日間分を踏み倒そうとしたの?」
「はい。ホーナーが捕まえていますが、どうします?」
「そうですね。若女将のご厚意を利用しての無銭宿泊。とてもじゃありませんが許せません」
ナンシーの眼がヤバい事になっている!
間違ってもこの状態で剣を握らせてはダメね。
「そうよね」
無銭宿泊はこれまでにも無い事はなかった。でも把握している限りでは漏れ無く捕えている。
そういう時には1人1日、1万サートゥル相当の労働をしてもらうか、村の自警団に付き出されるのかを選ばせるけど、殆んど全員が前者を選ぶわね。後者の場合、冒険者登録を取り消される事もあり得るから。
仕事は色々。ウチの周りの草むしりとか、道の整備とか、山菜を採って来る等の身体を使う仕事をしてもらっている。
「ダンジョンで入手したアイテムを売れば金になる様な事を言っていますけど」
「そりゃ幾らかにはなるかもだけど、ダンジョンで取れた物には眉唾物も有るしね」
って言うか、どちらかと言えば立派に見えてもゴミ同然の物の方が多い。
「そんなアイテムを鑑定して換金出来るなんて、大きな町のギルドじゃなきゃ無理よね?」
「はい。鑑定には経験を積んで身に付ける特殊スキルが必要ですから。私達では無理ですね」
ナンシーもうやっぱりそんなスキルは持ってない。ボブソンもホーナーも他のスタッフだって無理だろう。
いつも通り働いてもらおうにも目の前に居る姉妹に人手は足りていると言った手前、働かせる訳にもいかない。
どうした物か。私とナンシー、ボブソンで暫し考え込む。
「あの私、鑑定できます!」
この場の沈黙を破ったのはシンシアだった。
「えっ、そんな、鑑定が出来るの?」
嘘をついている様には見えないけど、本当なの?
「鑑定が出来る」なんて言うには鑑定の経験が10年必要だと聞いているのに。
「私たち姉妹は鑑定出来ます!」
今度は妹のケイトの方が自身に満ちた表情で声高に言い放った。
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質屋の娘だったのね、2人は。でも、「だった」って、過去形?
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