【完結】『力を失くした今の君に価値はない』と婚約破棄された元大聖女は、無理矢理嫁がされた異国の地で本当の愛を知る

夏芽空

文字の大きさ
10 / 25

【10話】気持ちのこもったプレゼント

しおりを挟む

 リゼリオに引っ張られる形で、人でごった返している路上をアンバーは歩いていく。
 そんな二人が向かった先とは、ジュエリーショップだった。
 
(どうしてジュエリーショップなんかに……)

 という疑問が浮かぶ。
 しかしそれは、店内に入った瞬間、彼方へと吹き飛んだ。
 
「うわぁ、綺麗……」

 どこもかしこもキラキラで、ゴージャスな雰囲気。
 きらびやかな光景にうっとりしたアンバーは、感嘆の声を漏らした。

 豪華な内装が施されている店内には、宝石を使用したネックレスやイヤリングが飾られていた。
 
 こういった店には今まで入ったことはなかったが、見ているだけでも楽しい気分になれる。
 テンションが急上昇していく。
 
「この店がお気に召したようだな」
「はい! とっても!」
「気に入ったものはあるか?」
「……そうですね」

 困惑した顔を、右へ左へキョロキョロと動かしていく。

 店内に飾られているアクセサリーは、どれもこれもが素敵だった。
 いっそのこと、全部気に入りました! 、と言いたいくらいだが、きっとそういうことではないのだろう。
 であれば、どれか一つを選ばなければならない。
 
 そうして、しばらく時間が経過した頃。
 
(これ……! すごく素敵だわ!)
 
 キョロキョロ店内を見まわしていたアンバーの目に留まったのは、ガラスケースの中にあるアクセサリーだった。
 
 それは、サファイアのネックレス。
 トップの部分には、大きなサファイアが飾られていた。
 控えめな地金のつくりも相まってか、とてつもない存在感を放っている。
 
 その美しい青の輝きは、気高いリゼリオの瞳を想わせる。
 見つけた瞬間、これだ! 、という直感が走った。
 
 素敵なものばかりが飾られている店内で、ようやくお気に入りを見つけることができたのだ。
 
「そのネックレスでいいんだな。ではさっそく購入してこよう」
「どういうことですか!?」
 
 ビックリしたアンバーは、大きな声を上げてしまう。
 お上品な店内にそぐわないマナー違反とも呼べる行為かもしれないが、そんなことを気にしている余裕はなかった。

「俺からのプレゼントだ」
「そんな……悪いですよ」

 アンバーが選んだネックレスには、とてつもない高額な値段がつけられている。
 高級品ばかりが飾られているこの店舗の中でも、頭一つ抜けているような値段だった。
 
 つまりは、高級品の中の高級品。
 そんなものを買ってもらうというのは、どうにも気が引けてしまう。
 
「それに、どうして私にプレゼントなんて……」
 
 そもそもとして、リゼリオからプレゼントをもらう理由に心当たりがない。
 
 理由も分からずに、高級なプレゼントを受け取る。
 そんなこと、できるはずもなかった。
 
「疲労がたまっていた俺を心配して、君は癒しの力を使ってくれた。おかげで、仕事を片付けることができた。本当に感謝している」
「感謝の言葉は既にいただいております」
「君への感謝は、それだけではとても足りない」
「私にとっては十分でしたよ」
「これは俺の気持ちの問題だ。どうか頼む。感謝の気持ちを受け取ってくれないだろうか」

 真剣な瞳でまっすぐに見つめられる。
 そんな視線を真正面から受けては、逆に、断る方が悪いような気がしてしまう。
 
 それに、嬉しい、という気持ちもあった。
 
 リゼリオの真剣さは、感謝の大きさだ。
 これまでに癒しの力を使ったことは数えきれないほどあるが、こんなにも感謝されたのは初めてだった。
 
「ありがとうございます」

 真剣なリゼリオの気持ちに、私も正直に応えたい。
 そう思ったアンバーは、リゼリオの感謝の気持ちを素直に受け取ることにした。
 
 
 会計を済ませてきたリゼリオからネックレスを受け取ったアンバーは、
 
「一生大事にしますね!」

 満面の笑みでお礼を言った。
 
 こんなにも気持ちのこもったプレゼントを貰ったのは、生まれて初めてだった。
 体の芯から、喜びの気持ちが湧き出る。
 その感情をまったく隠すことなく、アンバーは全て表情に出した。
 
「そ、そうか」

 リゼリオが慌てて視線を逸らした。
 頬が少し赤くなっているように見える。
 
 もしかしたら、褒められて照れているのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。 伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。 セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。 そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに…… 婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。 そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄されましたが、おかげで聖女になりました

瀬崎由美
恋愛
「アイラ・ロックウェル、君との婚約は無かったことにしよう」そう婚約者のセドリックから言い放たれたのは、通っていた学園の卒業パーティー。婚約破棄の理由には身に覚えはなかったけれど、世間体を気にした両親からはほとぼりが冷めるまでの聖地巡礼——世界樹の参拝を言い渡され……。仕方なく朝夕の参拝を真面目に行っていたら、落ちてきた世界樹の実に頭を直撃。気を失って目が覚めた時、私は神官達に囲まれ、横たえていた胸の上には実から生まれたという聖獣が乗っかっていた。どうやら私は聖獣に見初められた聖女らしい。 そして、その場に偶然居合わせていた第三王子から求婚される。問題児だという噂の第三王子、パトリック。聖女と婚約すれば神殿からの後ろ盾が得られると明け透けに語る王子に、私は逆に清々しさを覚えた。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

私に聖女は荷が重いようなので田舎に帰らせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるアフィーリは、第三王子であり婚約者でもあり上司でもあるドルマールからの無茶な要求に辟易としていた。 傲慢な性格である彼は自分が評価されるために利益を得ることに躍起になり、部下のことなど考慮しない人物だったのだ。 積み重なった無茶な要求に、アフィーリは限界を感じていた。それをドルマールに伝えても、彼は怒鳴るだけだった。 「申し訳ありません。私に聖女は荷が重いようですから、誰か別の方をお探しください。私は田舎に帰らせてもらいます」 遂に限界を迎えたアフィーリはドルマールにそう告げて聖女をやめた。 初めは彼女を嘲笑うドルマールだったが、彼は程なくして理解することになった。アフィーリという人材がどれだけ重要だったかということを。

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

処理中です...